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第九夜 Pearl of the Adriatic @Dubrovnik [Croatia]

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ゴンドラを降り、展望台の階段を上がると『スルジ山』の向こうにあった展望が一気に開けた。

ドゥブロヴニクの旧市街を背にする形で臨むと目の前に荒涼とした大地が広がる。
「これがダルマチアの風景だよ」ダニエルがそう呟く。
望遠レンズに変えた一眼レフのファインダーを覗いてみるが、そこにもなにもない大地が広がるだけだった。(写真2)

「よかったのかな? ゴンドラのチケット高いのに誘っちゃって」

「いや、むしろ感謝しているよ。ひとりだったら来なかったと思うから。
 お金の問題じゃなくて、一人でロマンティックな風景を観に来ても、ねえ?」

「確かにそうだね。でもそういってくれるとうれしいよ」

「いや、こちらこそうれしいよ、一緒に歩いてもらって。彼女も明るくて話しが楽しいし」

美辞麗句でなく、正直に礼を伝えたが、お互いの母国語でないところがなんとも歯痒い。
的確に伝わっているかどうかわからず、ただ繰り返し伝えるしかないのがもどかしかった。

座りやすそうな石を見つけ、それぞれ腰を下ろし、3人でまだ落ちていかない太陽を眺めていた。
座っていることに飽きるとダニエルはタバコを燻らせ、彼女はストレッチをしたり、
こちらは望遠と広角レンズを取っ替え引っ替えして、各々が自分の時間を楽しんでいた。

時折、ロマンティック・モードのふたりをファインダーに収め、
小さな画面で出来上がりを見せ、からかってみたりする。
なにをするでもなく、気に入った場所で好きなだけ過ごす、旅先でこんなに豊潤な時はない。

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第九夜 Strolled Old City @Dubrovnik [Croatia]

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待ち合わせの時間から15分ほど遅れ、宿近くのスーパーにタンデムのアメリカン・タイプがやってきた。

「待たせたね」

外国人と待ち合わせる場合、15分なんてのは許容範囲のうち、いや、なんなら早いぐらいか。

ヘルメットを脱いだダニエルと握手を交わすと、続いて後部座席から降りた彼女を紹介してくれた。

「で、どうするの?」

「この辺を歩いて、そのあと旧市街に行こうか。案内してくれない?」

「案内といってもなんにもないし、なんにも知らないよ、おれも」

そんな話しをしながら、民家の間の路地を歩き、
途中見つけたバイク屋で修理パーツを買い求めたりして、旧市街を目指した。

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ザダールの宿を出た後、ナニをしていたのか、お互いの短い旅を語り合い、
こちらの素性を彼女に明かすと、お返しのように二人の関係を教えてくれた。
ロシア人である彼女とは留学時代に北京で知り合ったらしく、ふたりとも中国語は堪能のようだ。
こちらがふざけて北京語で自己紹介するとふたりして路上でゲラゲラと笑いだし、
ふたりの口からはヘンな日本語での答えが返ってきて、今度はこちらがゲラゲラと笑わされた。

「アジアの他の国は行ったことがあるけど、まだ日本は行ったことがないのよ」

「じゃあ、来る時があったらしっかり案内するよ」

「それは心強いわ。日本語の勉強まで至ってないからネ」

「そのようでゴザイマスな」

他愛のない話をしながら歩いていると30分かかる旧市街への道のりも気にならず、『ピレ門』に辿り着いた。

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「なに観るの?」

「そっちはナニ観たいの?」

「教会とか昨日観ちゃったし、もう特にみたいもの、ないかな」

「え? 僕らも昨日チェックイン前に立ち寄ったんだ。じゃあ、適当に散歩しようよ」

まだ明るい夕方の城壁内、土産店を冷やかしたり、両替したり、船着き場で波に足を浸してみたりしながらブラついた。

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「ねえねえ、これって、デートのジャマになってないか?」

「なってないわよ、旅先の友達としゃべりながら街を巡るなんて楽しいじゃない?」

「いいのかねえ、こんなので」

「知らない土地でこうしてリラックスする時間がステキなのよ」

その言葉の通り、一番楽しそうにしていたのは彼女だったので、どうやら社交辞令ではなさそうだ。

城壁内はかなりの人出で混雑している、団体客が多いように感じるのは彼らがひと固まりで動いているせいだろうか。
アメリカ、ドイツ、中国、韓国、日本と国籍問わず、
ガイドが掲げた目印に従順に続き、ポイントポイントで説明を受けては慌ただしく移動していく。

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「ねえ、キミたち! 中国人と韓国人と日本人の見分け方、わかるかい?」

石段に腰かけ、それぞれが好きなフレーバーのジェラートに熱中していると先生口調でダニエルが語りだした。

「日本人女性の見分け方なら、よくシンガポール時代にガイドやドライバーとふざけて語り合ったけど。
 彼女らは化粧が上手で、クソ熱いシンガポールでもかならずパンティ・ホース(ストッキングの英語)を履いているんだ」

「キミは優秀ですね、正解」

「中国人はよそ行きの服装をしてるわね、そんなのでいいのかしら、先生?」

「はい、キミも正解。残ったのは韓国人だが、彼らはヘンなキャップとヘンなサングラスをしている。
 どこで買ったんだ、ソレ、というような突飛なデザインがホトンドだ」

「あはは、確かに。それを言うなら日本人も普段かぶらないような帽子をかぶるね」

「むむむ、新説が出てきたな」

「ダメだ、わたし、これ食べきれない」

くだらない話しを断ち切るかのように、ジェラート相手に格闘していた彼女が音をあげた。

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「ダブルなんか頼むからでしょ! この子は!」

「だ~って、いつもダブルにしているのよ、わたし。ここのダブルは大き過ぎるわ」

少しからかうと笑いながらこちらに反論しつつ、ジェラートの残りをダニエルに押し付けた。

「ぼくはもう食べられないよ、あそこのゴミ箱に捨てちゃいなよ」

「捨てるのはよくないわ、食べてよ」

「わけがわからないよ。自分は食べられないくせに」

「あはは、おれも手伝うよ」

そういって半分近く残ったカップの中身を3人でスプーンでつつき、なんとか退治した。

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「晩飯がいらなくなるぐらい食べた気がするな」

「くそ、残りのジェラートは海に投げ込んでしまえばよかったよ」

「そんなことしたらアナタも海に投げ込むわよ」

「あはは、おれも手伝うよ」

同じセリフを同じように繰り返すと音感がおもしろかったのか、ふたりはケラケラ笑い続けた。
笑っているふたりを眺めながら問いかける。

「さて、どうしようか。とても晩飯の気分じゃないよね」

「う~ん、そうだな、ゴンドラで丘に上がってみようか? ちょうど夕景が観られていいんじゃないかな。
 実は昨日行こうとしたんだけど、遅すぎて日没に間に合わなかったんだ」

「いいアイデアだね。でもそれなら暗くなる前に行こうよ、写真が撮れる」

「じゃあ、おなかを減らしにみんなで行きましょ。行列してないといいわね」

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旧市街の北側にある『Srd(スルジ山)』行きのロープウェイ乗り場に向かった。

路地を歩くと狭い通りに置かれたほとんどのテーブルは埋まっていた。
夕食にはまだ早い時間、カクテル・タイムだろうか、ツアー客を尻目に優雅なひと時を楽しんでいる。
考えてみるとこちらも安宿に泊まってはいるものの、すべての時間は何者にも支配されておらず、贅沢の極みだ。

こちらのBARの店先ではフラッシュ・モブのようなスタイルで、
普段着のホーン・セクションが生演奏を繰り出し、拍手喝采を受けていた。(写真5)
その向こうの広場ではメイクアップした大道芸人が人に囲まれ、注目を集めている。
ロープウェイは行列はしておらず、100クーナの往復チケットを買うとすぐ次のゴンドラに乗り込むことができた。

アドリア海に陽が落ちるにはまだ時間がある、果たしてどんな夕景が待っているのだろうか。


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第九夜 Stray Sheep @Dubrovnik [Croatia]

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―DAY9― 8月13日

今日も空は青く、アドリア海に豊潤な陽光が降り注いでいる。

早寝したので、朝早く目が覚めたが、連泊であることを思い出し、二度寝を決め込んだ。
う~ん、やっぱりシングル・ルームは気楽、
おまけにパッキングの必要もない連泊なので、気分も身体も大いに緩んだ。

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昨夜は陽が落ち、写真が撮れなくなったところで、旧市街から撤退した。

教会での祈りが通じなかったのか、一人でレストランに挑む勇気が湧くことはなく、
迷える羊のまま、食事は後回しにすることにした。
帰りのバスは西側の『ピレ門』前の広場から出るのだが、一向にやって来る気配がない。
夜になって極端に本数を減らしたのか、あるいはディナー・タイム近くになり、
辺りでも混みまくっている道にハマっているのかわからなかったが、
いつやって来るかもしれない路線バスを待ち続けるのはバカらしく思え、歩いて帰ることを決めた。
もっともドゥブロヴニクの地元の雰囲気を知りたい、という好奇心がそう理由付けただけなのかもしれないが。

来た時のバスの車窓から高低差が大してないことはわかっていたので、歩きでもイケるなと見当はつけていた。
バス・ルートを歩く形になるので、疲れたらやって来たバスに乗ってもいいのだ、
都合のいい言い訳を考えておくと歩みが少しはラクになるような気がした。

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実は旅先に限らず、日常生活でも「一度通った道を覚えている」という特技がある。

おそらく履歴書の「特技欄」に書くには至らない才能なのだが、いわゆる「方向音痴」とは真逆の性質で、
旅先では一度歩いた道は覚えてしまっていて、戻ったり、ふたたび訪れたときに苦労しないで済んでいる。
普段の運転だと知らない土地、道以外でカーナビをつける必要がなく、
フランス娘に積まれたナビは自分の住む県内ではほぼ無用の長物と化していた。

その特技が一番生かされたのはツアー・コンダクター時代で、
繰り返し訪れる観光スポットの入口、レストランや土産物屋など地図を見ることもなく、
慣れた道を散歩する「犬」のように客を連れて案内していた。

そんな感じで一人の旅先でも一度通った道ならばなんら問題はなく、
たとえそれがモロッコ・フェズのあの入り組んだメディナだろうと困ることにもならなかった。
http://delfin.blog.so-net.ne.jp/2008-06-01 (モロッコ紀行)

ところがスプリットの宿探しのように初めて訪れた街を勘だけで歩き、
グルングルンと迷宮の子羊に成り下がり疲れ果てる、という暴挙を繰り広げることもあり、
「特技」以上に「雑な性格」という「難点」を抱える旅人なので、とても賢い「犬」ではなさそうだ。
http://delfin2.blog.so-net.ne.jp/2015-01-09 (迷走@スプリット)

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細長いドゥブロヴニクの街を今度は南東から北西に向かって歩く。

途中、突き出た小山のような『LAPAD(ラパッド)』という地区が眼下に見える。
別荘や高級ホテルが点在するエリアで、夕闇にその飛び出した半島のようなシェイブが美しい。(写真4)
左手にそれを見ながら、狭い道路がうねる丘へ進むと民家が立ち並んでいて、地元の商店がチラホラと点在していた。

「まだやってますか?」

看板の灯りはついてなかったが店内が明るい食料品店に入った。

「OKよ」

旧市街でなにも買わなかったので、帰宅のお供とばかりに2Lの炭酸水のボトルを5クーナで購入。
フフフ、これで迷ったとしてもこいつがなくなるまでは歩き続けられるぜ。

などと戯言を並べている間に宿に着いてしまった、旧市街を出てから30分ほどの道のりだった。

おばあちゃんに教えてもらったバス停前のパン屋でピザとパンを買い、部屋への階段を降りた。
明かりのついていた母屋に声をかけ、コーヒー用のお湯とカップを貸してもらい、部屋でカンタンな夕食を済ませる。
周辺には民家しかなく、21時だというのに静まり返っていた。

窓を開け放つと乾いた風が部屋に飛び込んできて、エアコンなしでも充分に心地よく、気づくと眠りに落ちていた。

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ゆっくりと二度寝から起き出し、熱いシャワーを浴びて、のんびり朝食のパンを齧りながら、PCを立ち上げた。
実は昨夜、寝落ちする前にメール・チェックしたのだが、ちょっとした驚きがあったのだ。
ザダールで同じドミトリーの隣のベッドに泊まっていたハンガリアンのダニエルからメールが来ていたのだ。
あの「東海? 日本海?」といってきたちょっと変わったハンガリアンだ。

彼はザダールの数日後、ドゥブロヴニクの南の街でガール・フレンド(英語の場合「カノジョ」という意味)と待ち合わせる、
ということを話していた。
それまで日にちがあるので「湖にでも行こうかな」という感じで、
こちらが発つ朝に起こしてくれないか、なんてことを言っていたのだ。
http://delfin2.blog.so-net.ne.jp/2015-01-04 (ドミトリー@ザダール)

メールは「あの朝、起きられなくてごめん」なんて感じではじまっていて、
「13日にドゥブロヴニクに行くので、夕方にでも待ち合せないか」という内容だった。
こちらが湖を巡り、スプリット、ドゥブロヴニクと辿るルートであることは伝えてあったので、
もし日にちが重なるなら、と誘ってくれたのだ。

彼はバイクなので、隣り町からこちらの宿の近くまで出向いてくるという、17時でどうだ、との伺い。

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旧市街のわかりやすいところで待ち合わせすればいいのに、と思ったのだが、
観光地以外の普通の街も歩いてみたい、というこちらが考えるようなことと似たようなことを記してきたので、
ちょっと笑いながら、宿の場所の地図を添え、返信した。
こちらがスマホじゃなく、PCでしかメールを見られないことと日本の携帯の番号も記して。

夕方、宿まで来てくれる、となると昼間に旧市街に出向き、また戻ってくるのはメンドウな気がして、
ペースは一気にスロー・ダウン、ベッドの上で地図を広げ、今後の旅のルートを練り直すことにした。

北に向かい、モスタル~サラエヴォとボスニア=ヘルツェゴヴィナ・ルートを進むか、
このまま海岸線を南に進み、コトール~ティラナのモンテネグロ&アルバニアのルートを進むか、決め兼ねていた。
北へ進めば時計回り、南に向かえば反時計回りでバルカン・エリアを巡ることになる。
どっちが動きやすく、どっちが早く、どっちが旅しやすいのか、迷っていた。
「モスタルがきれいだったよ」ザダールやスプリットのドミで会った人たちがそう口にしていたのも気にはなっていた。

地図とたっぷり睨み合い、結果が出ないことがわかり、歩いて港にあるバス・ターミナルに向かうことにした。

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途中、地元の店などを眺めつつ、寄り道しながら港への坂を下りていく。
『Gruz(グルージュ港』に向かい、右手がバス・ターミナル、その左に大きなスーパー・マーケットが隣接し、
背後に大きなクルーズ船が停泊している。(写真6)
さらに左にはフェリー・ターミナルのビルがあり、国際路線も就航しているのだろう、
建物の中には出入国審査場と税関が備わっていた。(写真7)
不用意にカメラ片手に建物の中に入っていくと厳めしい顔をした警備員にジロリと睨みつけられる。
咎められることこそなかったが、旅行者でにぎわうロビーに舞い込んだ羊でしかなかったようだ。

チケット売り場の窓口で、長距離バスの料金と時間を尋ねた。(写真8)

サラエヴォ行きは8時と13時発、186クーナで6時間かかり、
コトール行きは146クーナで2時間、10時、11時・・・と1時間毎と本数が多かった。
モスタルへは126クーナで3時間、所要時間と金額のバランスがバラバラなのは路線によって、
先方の国のバス会社との取り決めだろう、ここから先はクロアチアではないのだから。

割安なのは一気にサラエヴォ突入作戦、ただし6時間のバス旅というハンデ戦だ。
朝もゆっくりのコトールなら、着いてからもランチできるぐらいのゆとり満載、ただし割高感が否めない、
人気のモスタルは時間も料金も手頃、ただし美しい橋とキレイな河しかないのでちょっと引っかかっている。

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明日はこの街を発つつもりでいたのでバス・チケットを購入してしまったほうが煩わしくないのだが、
すぐには決めきれず、隣のスーパーに逃げ出し、冷えたコークを店先で開け、作戦会議。

さあ、明日はどっちの道のりに行くのでしょう。


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第八夜 Beyond the Mass @Dubrovnik [Croatia]

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ミサの余韻や蝋燭の香りが残る礼拝堂で、しばし信者の気分に浸った。

観光案内所でもらった地図を目安にまずは『Srpska Pravoslavna Crkva(セルビア正教会)』、
続いて『Crkva Sv.Ignacija(聖イグナチオ教会)』、
『Katedrala Uznesenja Marijana(聖母被昇天大聖堂)』、
『Crakva Sv. Vlaha(聖ヴラホ教会)』と立て続けに見て回る。

信心深くもない罰当たり者だが、こういうときだけはひと時の敬虔なる迷える羊となり、
頭(こうべ)を垂れてみたりする。

なかには礼拝前後でないと入れない教会もあったので、時間的には恵まれた形だ。
いずれの宗教、いずれの宗派の建物も中に入ると時が止まったように感じられるのは大いなる錯覚だろうか。

クロアチアの旅を重ねるにつれ、『Crkva』が教会、『Sv.』が「St.」=聖者を表すことぐらいは覚えてきた。
まあ、そのクロアチアの旅もこの街で終わり、すぐに次の国へと繰り出すのであるけど。

この国にはカトリックばかりでなく、セルビア正教も点在し、
それは祭壇の違いなどで見分けることはできはしたが、宗教的な意味合いまで理解したわけでなかった。
国と宗教が入り組んでいる「バルカン・エリア」の国情はものの本を読んでみてもなかなかにわかりづらいのだが、
この旅ではそれを我が眼で確かめ、少しばかり肌で感じていくことを重ねていけば、なにかが見えてくるのだろうか。
もちろん教義を学ぶわけでなく、教えを乞うわけでもなく、ただ教会に立ち寄り、祭壇を眺めていくだけなのだが。

そして少しばかりの祈りの時間を。

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第八夜 Short Trip @Dubrovnik [Croatia]

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バス停前の段を降り、迷いなく門扉を開け、民家に分け入っていくおばあちゃんに続いた。

「あ、そうそう、そこの右側がスーパー、左の方にはパン屋があるわ」

降りたバス停の方向を見上げるように振り返り、指差しながら説明してくれる。
おばあちゃんはクロアチア語にカタコトの英語を混ぜて話しかけてくるのだが、不思議とわかりやすかった。
言いたいことを言い終えると民家の間の階段をどんどん降り進んでいく。
港に近いこの辺りは海から切り上がった段丘になっており、家々が上下に重ねるように軒を並べている。
見失わないようにこちらも慌てて階段を降りた。

先ほど入口の門扉の柱に『SOBE』のステッカーが貼ってあることは見逃さなかった。
どうやらキチンと許可を得た「民泊」のようだ。

「ここがあなたの部屋よ」

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階段を降り切るとこじんまりした家庭菜園らしき畑があり、
その脇に建てられた家のさらにその奥に別棟が建っていた。

別棟の前には薄暗い作業場が広く取られていて、奥にシャワーとトイレが別々に設けられている。
その続きに離れのような部屋が2つあり、明かりをつけると中にはツインのベッドが置かれていた。

「手前の部屋は客がいるから奥の離れを使いなさい。
 シャワーはこっち、このスイッチでお湯が出るけど、使ったらかならず切ってちょうだいね」

スイッチを入れ、明るくして説明、終わると順にすべてのスイッチをオフにする、という動きを繰り返した。
節電がマストなのだろう、どこの国も電気代は安くはないのだ。
部屋はこじんまりしていたが、キチンと整頓されていて、スツールやテーブルなどが置かれている。
ヨーロッパのどこかの街の古いホテルのツインの部屋の作りと相違がなかった。(写真4)

「エアコンはありますか?」

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「この土地は夜は涼しいから母屋にもエアコンはつけてないの、扇風機だけ」

古い民家だからエアコンはしかたがないか、
となるとWi-Fiなんてものを望むのは無理があるだろうな、
宿代の高い有名観光地『ドゥブロヴニク』で頃合いのいいシングル・ルームを確保できたのだからよしとするところか、
などとアレヤコレヤ妥協点を見出そうと、考えが頭の中を駆け巡っていた。

ふと見渡すと、「パスワード」と記された紙がテーブルの上に置かれている。

「パスワードって、ここWi-Fiあるんですか?」

「使いたいなら繋がるわよ、そういうお客さんが多いから息子が工事して取り付けたのよ」

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「エアコン」はナシだが、「Wi-Fi」はアリだという。

部屋に長く居るつもりはなかったので、マイナスよりもプラス加点が大きいぞ、これは。
「シャワー・トイレ別」なのは気にならないし、「熱いお湯」が出るのであればそれ以上に文句はない。
通りに上がったところには「スーパー」があり、並びに「食堂」がある点も実は大いにプラス加点だ。
それにこれからまたバス・ターイナルに戻って、
他の客引きをあたったり、宿探しにうろつくのは大きなマイナス査定に違いない。

「で、200クーナと言ってましたが、2泊したら300クーナにしてくれませんか?」

「いいわよ、2泊でも1週間でもうちは歓迎よ、長くいてくれたらうれしいわ。
 先月いた日本人のコは1週間滞在していったわ。あなたは300クーナでOKよ」

「いや、一週間はいないですけど、2泊はします。じゃあ300クーナで」

背負っていた荷物を置き、宿代を支払おうとすると、
扇風機のスイッチを入れ、テーブルにタオルと石鹸、それと殺虫剤を置き、扉を閉めて出て行ってしまった。

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「あのお、お金、払いますよ~」

「いつでもいいから!! アナタは一週間いてもいいんだからね!!」

なにやら他に用事があるらしく、大きな声で返事をしながら母屋に消えていった。

このところドミトリーが続いていたので、1泊150クーナ≒3,000円でのシングル・ルーム滞在は悪くない。
バゲージの中身をブチまけてあらためて荷造りできるし、
シャワーついでの洗濯ものも3日間干しっぱなしにできるのもちょっと気楽だった。

その後も顔を合わせるたびにこの「一週間」というフレーズは呪文のように繰り返されることになった。
おばあちゃんのこの呪文は「気を遣わず、くつろいで居て」という意味合いに都合よく受け取ることとした。

時計を見ると路線バスを降りてから、40分ほどが経過していた。

カメラと望遠レンズの入ったカメラバッグだけを持ち、慌てて停留所に戻る。
というのもこの街のバスは1時間以内なら乗り継ぎ無料、ということなので、
先ほど乗車時にもらったトランスファー・チケットを使えば、そのまま旧市街に出向くことができるのだ。
240円程度の小さな節約だけどね。

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旧市街に着くと、19時を過ぎていたが、まだ日は高く、充分写真が撮れる明るさが続いていた。

アドリア海の真珠『Dubrovnik』は北西から南東に細長い街で、
宿は北西の端、バス・ターミナルやフェリー・ターミナルがある『Gruz(グルージュ港』に近く、
城壁に囲まれた『Stari Grad(旧市街)』は南東のはじっこと真反対に位置することになる。

宿代が少しばかり安かったのも旧市街からは距離があるエリアの『SOBE』だったからかもしれないが、
旅行者としては重い荷物を持って歩かずにすむので、バス・ターミナルに近い宿は大いに歓迎なのだ。
ただしメインの観光スポットには大いに歩くけどね。

11時の方角から17時の方角へ、ちょうど対角線を描くように路線バスで南下してきた形だ。(写真5)
バス停の名前もわからなかったが、城壁が見えるあたりでワラワラと降りていく観光客に続き、事なきを得た。

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人の流れに沿って下ると、レストランや土産屋がニギヤカに軒を連ねていた。
そこからさらに城壁内に歩みを進めると急に人影が濃くなり、
城壁を越えると同時に人ごみに飛び込む形となったこちらは
すっかり都会に出てきた田舎者のような気分にさせられた。

地名の入った土産物が並び、Tシャツが風になびき、たくさんの絵葉書が店先で回っている。
子供が旗を振って駆け回り、ご年配は段差に腰を下ろし小休止、家族連れはジェラート片手に歩いている。
其処彼処でカップルは写真を撮り、色づいた空には飛行機雲がたなびいていて、
城壁内はさながらテーマパークのようだった。

これだけニギヤカでバラエティに富んでいるなら、
城壁内で夕食を済ませてから帰ってもいいかな、なんて考えが浮かんできたが、
華々しい観光地のレストランでの一人飯は自殺行為に等しく、
きっとご飯を食べる前に寂し死にしてしまうに違いない。

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お得な航空券一括比較『スカイスキャナー』

思いつきの考えを振り切りながら、それでもなにかめぼしいものはないかなと物色しながら、
路地からさらに狭い路地に迷い込んでみる。
夕食にはまだ早いこの時間、夕方のミサが終わったのだろうか、
あちらこちらの教会が大勢の人たちを吐き出していた。

旧市街の教会を見て回るのはいいアイデアかもしれない、寂し死にしないように祈りを捧げることとしよう。


スプリットからへドゥブロヴニクへ
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第八夜 Unexpected Plan @Dubrovnik [Croatia]

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右手に波止場、左手に鉄道駅を眺めながら、さらに奥にあるバス・ターミナルへ。

昼を過ぎると気温はますます上がり、今日もこのまま40度近くまで気温計を押し上げそうな陽気だ。
熱い時間に到着した客はウンザリした表情で歩き出し、
熱い時間に旅立つ人は当たり前の顔をして荷物を引きずっていく。
陽射しを遮る雲はなく、乾いた風はほんの少し海の湿り気を含んで心地よく吹き抜けていく。

『Dubrovnik(ドゥブロヴニク)』行きのバスは予定通り、13:00に出発した。

半分程度の座席が埋まっていただけだったので、指定座席を無視し、後ろのドア前の席に座った。
この席は後部ドアのすぐ脇にあるので、前の座席の圧迫感がなく、視野抜けがいいので気に入っている。
一番後ろの席を早々に陣取る人もいるが、最後尾はエンジン音がうるさかったりするしね。
座席ではたいがいデッキ・シューズを脱ぎ、2つ分の座席の上で胡坐をかいて手元に文庫本というスタイル。
ほとんどの路線で満席になることはないバス内では靴を脱ぐだけでなく、横になっている客も多い。

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前にも記したがクロアチアの長距離バスは新しい車両が多く、座席も広く、清潔で快適だ。
なんと今回のドゥブロヴニク行きのバスはさらに新しく、車内にはWi-Fiが装備されていた。
う~ん、やはりヨーロッパではWi-Fiはもはや「社会インフラ」の一部、
どこでも金を取ろうとするどこかの国とは大違いだ。

ダメモトでPCを開き、Wi-Fiに繋いでみる。

「あわよくば宿探しできるかな?」と思ったものの、Webメールをチェックするのがやっと。
なにせ走り続けるバスからでは電波はブツ切りで、Webサイトを閲覧するのは困難だった。
あきらめてPCを閉じ、ランチタイムにすることに。

スプリットでは旧市街でランチを食べてからバスに乗り込む目算でいたのだが、
追われるような形でチェック・アウトとなったので、あらためてホステルに荷物を預ける気にはならず、
宿を離れる前のわずかな時間にスーパー・マーケットに駆け込み、
オレンジ・ジュースと炭酸水のデカイボトルとパンとハムを買い込んだ。

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ステキな(!)振る舞いの宿のスタッフのおかげで今日の昼のプランニングは予定変更、
バスに乗り込むだけとなったので、重い飲み物のボトルも躊躇なく買い込んだのだ。

座席で袋を開き、パンにハムを挟んでいると車内のランチがこの上なくいいアイデアに思えてきた。

「何時にドゥブロヴニクに着きますか?」今朝、チケットを買ったついでに尋ね、
「18時到着予定よ」という答えをもらっていた。
5時間ものバス旅、文庫本を読むだけでは間が持たない。
PCには映画も入っているが、バッテリーが持たない。
寝るには充分な時間だが、エアコンがシッカリ効いた車内でゆっくりランチをパクつくのも悪くない、
なにせ車窓にはアドリア海の美しい風景とキレイな田舎町が次々に現れては消え、退屈しない。
あとはコーヒーが出てくれば文句なしだが、そいつは到着の18時以降のお楽しみとしよう。

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14:40、『Makarska(マカルスカ)』という町で少し早めのトイレ・ストップ。

海岸沿いの一般道を走り続けているので、道沿いのレストランがサービス・エリア代わりだ。
降りる際にドライバーの顔を覚えておき、バスを離れる。

レストランのテーブルでエスプレッソを頼むと、隣のテーブルにドライバーが座っていた。
これなら置いていかれることもはぐれることもなく、ゆっくりコーヒーを味わえる。
それにしても食後のコーヒーにこんな早くありつけるとは、なんとまあラッキーな。
パンを頬ばっているときはトイレ・ストップのことをすっかり忘れていたのだ。

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16:40、南下を続け、今度は『Neum(ネウム)』という土地でバスは止まった。

少し前にバスは越境し、『Bosne i Hercegovine(ボスニア・ヘルツェゴビナ)』に入っていた。
クロアチア南側の海岸線沿いは飛び地や国境が入り組んでおり、出入国を繰り返すことになる。
ということで今回は『ボスニア・ヘルツェゴビナ』で用を足すことになった。

長距離バスのトイレ・ストップはモチロン乗客のためでもあるが、
2~3時間で小休止を取るドライバーのためのものでもあったりする。
SAやCAFEのテーブルに着いてカップを傾け、リラックスするドライバーがホトンド、
ツアコン時代にはドライバーやガイドに呼ばれ、一緒にテーブルを囲んで語らったっけ。

今もこうして乗客のひとりとして、見知らぬ土地の知らないレストランでコーヒーを傾けるひと時はキライじゃない。

バスがふたたび走り出すとクロアチアの国境が見えてきた。
再入国時、係員が乗り込んできて、パスポートを軽くチェック、
あれ、ボスニアに入るときはなにもなかったよね、このあたりのルールがまったく分からんなああ。

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一般道を走り続けたバスは18:05、ほぼ予定通りにドゥブロヴニクのバス・ターミナルに到着した。

トランクからバゲージを受け取り、ドライバーに礼を言うや否や、客引きのオバチャンたちに取り囲まれた。
少しばかり面喰い、彼女らを振り切り、逃げるようにチケット売り場に向かう。
パスから降りたばかりでの客引き攻撃はちょっとばかり怯むんだよね。

次の街へのバスの時刻と料金を尋ね、冷静さを取り戻し、表に出るとふたたびオバチャンに声をかけられた。

「あなた、ホテル決まっているの?」

「いや、決まってないけど」

「じゃあ、『SOBE』にしなさいよ」

「でも一人だからシングルになるけど、部屋ある?」

「シングル? それならあっちのばあちゃんよ」

そうこちらに告げるとベンチに腰かけていたおばあちゃんの手を引き、戻ってきた。

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「この人、シングルだって。ばあちゃんの所ならOKでしょ?」

「うちは1泊200クーナよ、シングルOK、日本の人は大歓迎よ」

こちらをさておき、エプロン姿のオバチャンと腰の曲がったおばあちゃんとの間で商談が進んでいく。
そりゃあ、金払いもよくて、部屋を荒らすこともない日本人客は大歓迎でしょうよ、などちょっと斜にかまえていた。
それにしても客引きのオバチャンたちは英語やフランス語、客に合わせた会話力が堪能だ。

ムムム、と腰が引けているとおばあちゃんがこちらの手を取り、市内バスの乗り場に向かっていった。

「あの~、2泊したら安くなりますか?」

「いいわよ、心配ないわ、一人ならうちの『SOBE』に来なさい」

「いや、その~、2泊したらいくらになるのか、知りたいんだけど」

聞いているのか聞いていないのか、あるいはしらばっくれているのか、
こちらの話を気にもとめず、やって来た市内バスに乗り込んでいく。

「はい、料金箱はここよ。すぐ先で降りるから用意しておいて」

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運転手も顔見知りらしく、おばあちゃんにご機嫌伺いの話などしている。
車内にも知り合いがいたらしく、腰かけて普通に話をしている。
おばあちゃペースに戸惑いながら料金を尋ね、12クーナを料金箱に放り込んだ。
(あとからわかるのだが12クーナは事前にキオスクで買った値段、
 車内で支払うと15クーナになるので、どうやらおばあちゃんのカオで安くなっていた模様)

周りの人の雰囲気からするとどうやらアヤシイオババではなさそうだが、
こちらは宿代が値切れるのか、あるいは言い値で泊まらされるのか、そのことばかりが気になっていた。

小さなバスはターミナル前の坂を上がり、停留所を3つほどやり過ごすとおばあちゃんは停車ボタンを押した。


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第八夜 Disappointing Things @Split [Croatia]

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―DAY8― 8月12日

フロントでコーヒーをもらい、昨夜買ったパンをそいつで流し込み、カンタンな朝食にした。

湖散策と宮殿迷子のツケとして、両足に筋肉痛という枷が残っていたが、
あさイチでバス・ターミナルへ向かう気になっていたのはこの街への興味を失ったからかもしれない。

昨夜1時前まで歩き回り、行楽地と化しているこの街がどことなく肌に合わないことがわかった。
こればかりは個人的な好みというやつで、宮殿内の路地や店は情緒に溢れ、写真の枚数も進んだのだが、
その街に溶け込む気分にはなれなかった。

自然溢れる湖からやって来たギャップに戸惑ったか、
あるいは同じ海岸沿い、同じ城壁の街ながら長居したくなったザダールとの客層の違いに戸惑ったか、
深夜の街歩きの最中、すでに次の街に向かうプランが頭の中を占めていた。

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バス・ターミナルへの道行き、数ある両替店のなかから、レートのいい店で両替を済ませ、
ドゥブロヴニク行きのチケットを購入、13:00発のバスは125クーナ也、これで次の道のりが決まった。

一応、午後発にしたのは午前中にこの街の昼間の顔を見て回り、ランチを済ませてから発とう、という企み、
5時間のバス移動なので、暗くなる前に次の宿に辿り着けるだろうという算段も重なった。

実は次の宿を決めていなかった。
もはや有名観光地でもあるドゥブロヴニクはネット上にあまりいい安宿が転がっておらず、困っていた。
こうなったらパックパキングの原点に戻り、現地で安宿探し、
クロアチア式の民泊でもある『SOBE』に潜り込んでもいいかな、と考えていた。
ブッキング・サイトにあまりに安宿情報がないため、現地に行けば安い宿が見つかりそうな気がしており、
週末でもないのでそれほど切迫してもいなかった。

このあたりは一人旅の気楽さでもあり、いい加減さでもある。

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つら~い首・肩のコリに。【ファイテン公式】

今日もカラリと晴れ渡り、空は無制限に青い。
フェリー・ターミナルではクルーズ船に乗り込むためか、あちらこちらに行列を成していた。
浮き輪や水鉄砲を手にした子供たちははしゃぎ、サングラスをした大人たちは大きな荷物を抱え、船旅に備えている。

振り返るとこのクルーズ客たちや夜、クラブでハメを外す若者たちといった、
ウキウキと旅に来ている人たちがこの街の旅行者の「層」、こちらとでは旅の毛色が違ったのだ。
この街が悪いのではない、国内旅行かヨーロッパのバカンス客かわからないが、ここはそういう旅で訪れる街なのだ。

宿のすぐそばには小さな魚市場があった。

街の真ん中にある地元の人御用達の市場には近場の海で獲れたであろう海産物が並んでいて、
鮮やかな色合いがどれも美味しそうに見えた。
写真を撮らせてもらいながら店先を眺めていると「おいしいよ、買っていきな」と気さくに声をかけられる。
あるいはファインダーを覗きながら、ヨダレを垂らしていたのかもしれない。

買いたいのはやまやまだったが次の宿にキッチンがあるかもわからず、生ものをブラ下げて歩くのはリスキー過ぎた。

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『Dioklecijannova Palace(ディオクレティアヌス宮殿)』は、
東に『Srebrna Vrata(銀の門)』、西に『Zeljezna Vrata(鉄の門)』、
北に『Zlatna Vrata(金の門)』、南に『Mjedena Vrata(青銅の門)』(写真3)という4つ門に囲まれていて、
どこから入っても昨夜、賑わいを見せていた『Peristil(ペリスティル)』と呼ばれる広場にぶつかる造りだ。

海に面している『青銅の門』から城壁内に進むと宮殿の地下が広がっている。

外は40度に近いというのに石造りの内部に入ると冷やされた空気が心地よい。
ここがワイン倉庫として利用されているのも頷ける。
涼やかな通路の両脇には土産物屋が並び、絵葉書や置物といったお決まりの品が出迎えてくれていた。
とはいえ、午前中のこの時間、まだ店員が来てない店や開けただけの土産物屋がほとんどで商売っ気はなく、
熱さから逃れてきた観光客を急き立てるような雰囲気もないのが心地よかった。

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世界最大の宿泊予約サイト、Booking.com 

そのまま『ペリスティル』に向かって進むと『Vestibul(前庭)』と呼ばれる小さなホールに出会う。

かつての玄関であった場所は円形の吹き抜けが特徴的だ。
「写真撮ってもらえませんか?」と家族連れに声をかけられる。
こういう場所では欧米系だろうが、アジア系だろうが、仲間同士の記念写真に没頭している。

すまなそうに声をかけてくるグループがホトンドで、
こちらとしては「よくまあ、このヘンな一人旅のアジア人男性に声をかけてきたものだ」と歓迎の意を示し、
「いいですよ」と明るく丁寧に対応することにしている。
こちらが一眼レフを手にしているので、ちゃんと撮ってもらえる、と目論んでのことかもしれないが。

撮られるほうは気を使ってか、代表者がカメラを渡してくるが、
たいがいは仲間内にはもう一人二人、撮ってもらいたい人がいて、言い出せない素振りを見せるので、
「そっちのカメラも撮りますよ?」と声をかけると嬉しそうに笑みを浮かべ、カメラを預けてくる。
その人たちは心配事が消えたかのように満面の笑みで写り込むことに没頭しているのがまたおもしろい。

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デジタル・カメラの普及率というやつは恐ろしいもので、
時にはこちらの手元には4~5台のカメラがやって来ることになる、フィルム時代にはなかったことだ。
それらを首にかけたり、手首を通したりして、落とさないように段取りし、
「ワン、トゥ、スリー!」という合図をそのグループの国の言葉で言ってみたりすると、これまたウケがいい。
「い~、あ~る、さん!」なんて口にすると中国人グループはゲラゲラ笑い出してくれるが、
彼らの笑顔がどう写ったかまではしらない。

これもまたツアー・コンダクター時代に培われた手腕、
有名スポットとなると記念し撮影したがるお客さんたちを並べ、
10~15台のカメラを預かり、次々撮りまくる、なんて芸当を繰り広げていたっけ。
国内旅行だとよくある「集合写真販売」なんてのは海外ではあまりないからね。

円形の天窓の下、撮影会を繰り広げていると揃いの衣装を身に着けた男たちが現れ、歌いはじめた。

石造りのドームに音が良く響く。
観光地ではあるものの、生の音楽に浸れるのは格別だ。
その街、その場所に合った伝統音楽、民族音楽となると力者であるこちらにも一塩の染み込み方をする。
チップ目的の大道芸かな、と思って耳を傾け続けていて、いくらか投げ入れるかな、
どうやらCDをセールする地元ミュージシャンのようだった。

路上ミュージシャンに聴き入った場合や大道芸人と写真を撮る場合はそれなりのチッピングが必要ですぜ。

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国内&海外の格安ホテル検索『トリバゴ』

「そろそろチェックアウトしてくれない?」

11時ごろ、シャワーを浴びるつもりで早めに宿に戻ると美人スタッフの耳を疑うような言葉に驚かされた。

「チェックアウト時間は12時だろ?」

こちらもちょっとケンカ腰だ。

「そうなんだけど掃除が進まなくて」

(おいおい、それを客に言うかよ)

彼女の言葉を聞き流し、部屋で着替えを手にし、シャワー・ルームを使った。

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午前中の汗を流し、荷物を詰めて、チェックアウトし、バゲージを預かってもらい、ランチに出向こうと考えていたのだが、
その計画に一気に嫌気がさし、すべての予定をシャワーで洗い、リフレッシュすることにした。

開業間もない新しい宿、ということでこのホステルを目指してやって来たのだが、
働いているスタッフは軽い感じのニイチャンとネエチャンたちで、しかも頻繁にスタッフが出入りしていた。
擦れ違った2~3人のオネエチャン・スタッフはどの女性もモデルようにキレイで驚かされたが、
こういうビジネスとは思えないほどの無愛想さで最後には上のセリフが飛び出した、というわけだ。

カリカリしてもしかたがない、タップリと時間をかけて荷物をまとめ、ギリギリにチェックアウトした。


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第七夜 Lost in the Palace @Split [Croatia]

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チェックインを済ませると、いつものように荷物を置くだけですぐに街に繰り出した。

幸いスプリットの街は夜が遅いようで、この時間でも旧市街の通りや路地を行き交う人が多い。
食後の散歩を決め込んでいる家族連れや酔ったカップルと擦れ違いながら、
夕食にもありつけていないこちらは気の利いた食堂かテイクアウトでもないかと物色しつつ、
城壁に囲われた『ディオクレティアヌス宮殿』内を無手勝流に歩いた。

路地は雰囲気のある暗さを保っていて、アブナイ感じはしない。
ムードある情景に夕食よりも写真を撮ることに気を奪われてしまい、路地を歩き続けていると
ポコンという感じで、明るく人が多い広場に出た。

そこは宮殿の中心である『Peristil(ペリスティル)』と呼ばれる広場、
集合をかけたかのように大勢の人たちが広場を囲う周りの段に腰かけていた。

なにかイベントでも行われるのかと気を惹かれたが、目的もなくただ夏の夜に浸っているだけのようだ。
夕食後のひと時、部屋に帰るのがもったいなくて、石造りの中庭でのひと時を楽しんでいるのだろう。
特にナニカが行われるわけでもなく、ナニカをするわけでもなく、
仲間同士でおしゃべりをし、子供たちははしゃぎまわり、言葉もいらないカップルは肩を寄せている。
その中に混じってゆったりと古き宮殿での夜を味わうのは悪い気分じゃない。

夏の夜はまだまだ長く、白い石壁や城壁の上には明るい月が彼らを照らしていた。

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宿を探し出し、チェックインしたときには時計は21:30を回っていた。
旧市街に入ればすぐに見つかるだろうと高を括って歩いていたが、
結局、40分近く彷徨い、迷ったことになる。

元「宮殿」の旧市街は約200m四方、その広さは「屋敷」ではなくまさに「市街」だ。
その四角く囲われた城壁の西側『ナロドゥニ広場』に続く路地に目指す宿があったのだが、
宿のアドレス、つまり通りの名前だけメモって来たというのが大いなるミステイクだった。
名の知れた大通りからの道順をキチンとメモっておくべきで、
入り組んだ小さな路地の名前を探し出すことにたっぷり苦労をさせられた。

「困ったら聞く」という旅の心情を下に夜通し開いている売店に立ち寄り、通りの名前を告げても、
「ごめんなさい、わたし他所から働きに来ていて、ここには詳しくないの」という店員の答えや、
「夏の間だけ働きに来ているから」とパン屋の職人からのつれない言葉しか引き出せない、という不運も重なり、
我が心情はもろくも崩れ去っていった。

スプリットは街自体が一大バカンス・タウンらしく、
出稼ぎや季節労働など他所から出向いている人が多いらしい。
翌日、街の目前に広がる波止場から次々と出発するクルーズ船に行列する行楽客を見て、そのことを再認識させられた。

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旅行の前に口コミチェック!


英語も通じない地元のオジサンを捕まえて、なんとか道を教えてもらい、
宿の向かい(!)のレストランのギャルソンに建物を指し示され、
市場の裏の入り組んだ路地にあるホステルをなんとか探り当て、今夜の寝床を見つけ出した。
それもこれも短い時間で慌てて予約を入れた自分のミステイク、ツケは自分の足で払うことになるわけだ。

宿はホステルというより、旧市街の建物の中にあるアパートという感じでホームステイのようなスタイル、
4つに分かれた部屋それぞれが男女相部屋のドミトリーとして使われていた。
ここもやはり「新しいから」という理由で目星をつけた宿だ、

ドミトリー1泊165クーナ(≒3300円)、キャッシュの持ち合わせがなかったので、翌日まで待ってもらうことにした。

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あてがわれた部屋は3人部屋、二段ベッドをフランスの女のコペアが使っていて、
ありがたいことにこちらには普通のシングル・ベッドが残されていた。(写真4)
どうも今回はフランス女性の二人組に縁があるようで、なにか発展でもあるのかな。

「こんばんは、よろしく」

英語でそうアイサツすると、ふたりからはぎこちない返事と笑顔が返ってきた。
どうやら英語がダメなようで、ふたりともしゃべりながら苦笑いしている。

「ぼん・そわー、まんまぜー」

「アナタ、フランス語、しゃべれるの?」

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インチキフランス語でアイサツすると、笑顔とフランス語の問いかけが返ってきた。
カタカナで記すと「ボン・ソワール・マドマゼル(こんばんは、お嬢さん)」となるが、
日本人に難しすぎるフランス語の発音とやらは音的にはこういったほうが通じやすいのだ。

「のん・ふらんせ(モチロン、しゃべれません)」

「あはは、キレイなアイサツだからしゃべれるのかと思っちゃった。
 わたしたち、これからクラブにいくの、だから部屋はゆっくり使って」

肩を露出したナイト・ドレスに着替えた彼女たちはそう言い残し、出かけていった。
有名なバカンス地なのでナイト・ライフも充実しているのかな、いい出会いがありますことを。

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安宿ということもあって客層は若く、隣の部屋からはボリューム抑え目のEDMの音が漏れていた。
こちらも負けずに貸し切りになった部屋で音楽でもかけて、ベッドでリラックスしたい状態だった。
なにせ炎天下で行列を作り、観光客を縫うように歩き、
とどめに宮殿近くで彷徨う、といういらないオチまでつけた一日だ。

シャワーを浴びて、そのままベッドに倒れ込んでもよかったが、
まずは夕食を入れないことには疲れが割り増しになりそうで、いつものスタイルを貫き、すぐに外に出た。

夏の夜に溶け込みそうな人たちが集う広場を離れ、ピザやデリカテッセンが並んでいた路地へ戻った。

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カラマリ(イカのフライ)と生ハムを買い、店先のテラスに腰かけ、頬張った。

メニューからすると絶好の酒のアテでしかないが、
別の店で買ったホール・ウィート(全粒粉)のパンを齧り、炭酸水のボトルを傾けた。
ヨーロッパだとなぜこうもガス入りミネラルウォーターがウマイのだろう。

カンタンな夕食を済ませ、また夜の宮殿内を眺めて歩く。

時折、路地に若者の嬌声が響く、アルコールがリミットを超えてバカ騒ぎしているのだろうか、
あるいはクラブでは足りずに路上で踊っているのかもしれない。
困ったチャンが現れるのは有名観光地での名産品か。
ブランド・ショップが灯を消した『Marmontova(マルモントヴァ通り)』では、
はしゃぐ子供の手を引いて、家族連れがお散歩、ここでは時間のことを問うのは野暮なようだ。

昼間はクルージング、あるいはビーチのアクティビティ、
そして夜はBARかクラビング、どうやらここは夏の遊びにはもってこいの場所なのだろう。
これまでの街と比べるとここスプリットは客層も若い、夏に人を集める行楽地の典型かもしれない。

音楽が漏れ聞こえてきたので、その方向に進んだ。

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どこからでもたどり着くことのできる中庭『Peristil(ペリスティル)』(写真7)でギターの弾き語りがはじまっていた。
どうやら中庭で営業するBARの出し物のようで、店先ではプラスティック・カップのカクテルが次々に売れていた。
石造りの宮殿の中庭、心地よい潮風、夏の夜、カクテルの酔い・・・、これ以上なにが必要だろう。

日付は変わったが、歩きをやめるのはまだまだもったいない。


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第七夜 Moving to Dalmatinska @Split [Croatia]

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バスを待っているのだろうか、『Ulaz 2』のバス・チケット小屋の周りに好き勝手に腰かけている姿が多い。

バックパッカー・スタイルがほとんどでそれぞれがデカイ荷物を傍らに置き、
思い思いの態勢でやって来るバスを待っているようだ。
というのも小屋はあるものの「バス停」らしき目印はなく、
今朝降ろされた場所で様子を伺いながら待っているだけなのだ。
他にも人がいるので「ハズレ」ではなさそうで、こういう時は「多勢」に任せてかまわないだろう。
時刻は夕方に差し掛かり、木立ちに覆われているバス停であろう場所には少しばかり肌寒い風が駆け抜けていく。

16:40、予定より10分遅れてスプリット行きのバスがやって来た。

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「ザッダール!! スプリーット!!」

ドライバーは声高に叫びながらトランクを開け、荷物を積み込んでいく。
彼の手が空くのを待って、行き先を確認し、荷物を預け、車内に進んだ。
2つの行き先を告げていたこともあり、確かめたかったのだ。
どうやらスプリット行きはザダールを経由してから行くらしい。

ヨーロッパとはいえ、乗り物の行き先は確かめたほうがいい。
英語が通じなければ、手元のチケットを見せ、確認した上で乗り込んだほうが間違いがない。
現地では日々変更があり、ガイドブックやネットには表れないことが次から次に湧いてくるのだ。
行き先の間違いは笑えないトラブルを生むことになるからね。

バスは満席状態、走り出してすぐ次の停留所に停まったものの、3人を乗せただけで他の客を断り、ドアを閉めた。

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『Gradinsko Jezero(グランディンスコ湖)』を反時計回りに回り、
『Galovac Jezero(ガロヴァツ湖)』の触りだけを眺め、『上湖群』と呼ばれるエリアはあきらめ、
今度は時計回りに『Jezero Kozjak(コズィヤク湖)』の山道を歩き、湖を見下ろしながら下流へ向かった。

エコロジー・バスが走る南側の遊歩道はグループやツアー客でごった返していることは望遠レンズで見えていたので、
これを避け、人が少ない山道を時計回りで進むことを選んだのだ。
おかげで崖の上の展望台や滝の上などちょっと変わった場所からの景観を楽しむことができた。
「みなが見ている風景」は求めていないし、「切り取られた風景」と同じものを探す趣味もない。
できることなら「自分だけが見つけた風景」を探り当てられればうれしい限りだが、
もはや地球上にそんな風景は存在しないだろう。
なのでただ単に「ヒネクレ者のツブヤキ」と思っておいてください。

『Veliki Slap(ヴェリキ滝)』の裏側から降りる形で『下湖群』に到達し、電動バスで戻るため『ST1』を目指した。

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世界最大の旅行口コミサイト【トリップアドバイザー】

案の定、南側の遊歩道は人で溢れている。
滝の水音の合間に韓国語が響いてくる、どうやら韓国の団体さんが多いようだ。
その間を埋めるように中国語がチラホラ聞こえるが、北京語なので大陸人か台湾人かはわからない。

木製の舗道ですれ違う際、「あんにょ~ん」(こんにちはの軽い感じ)と声をかけると、
驚いて振り返りながら「ハングクッ・サラン?(韓国人?)」と化粧の濃いアジュマ同士がささやき合っている。
この声を聞いて「イルボン・サラ~ン!!(日本人!)」と大声で返すと相手はドン引きしていた。

中国系にも同じように「にいはお~」とやってみるが、彼らは記念写真か自撮に夢中でたいがいは気がつかない。

欧米系は目が合うと先に「ハーイ、ジャパン」と言われ、聞き返して出てきた国の言葉でアイサツをするとウケがいい。
英語、フランス語、スペイン語、イタリア語、オランダ語、ドイツ語、トルコ語・・・
ツアコンの経験から西欧諸国のアイサツと会計(数字も)ぐらいはいえるのだが、
こんな時しか役に立たたないどうでもいい能力のひとつだ。

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以前も記しましたが、カタコトでもいいので訪れる国の「挨拶」と「お礼」の言葉は覚えておくと距離感が縮まります。
英語で返すよりも地元の言葉で伝えれば、笑顔が返ってきます。
カタコトの日本語を話す外国人に日本人が好感を抱くのと同じ感覚でしょうか。
余裕があるなら「会計」と「数字」を覚えられると旅がグッと楽になります、店先で電卓叩かなくて済みますし。

フランス語で「いくら?」って聞けばフランス語の数字で返ってきますからね、「数字」まで覚えないと意味がありません。
英語で聞けば英語で、その国の言葉で聞けばその国の言葉で返されるので、「会話本」広げても役に立ちません。
と書きつつ、初上陸の「クロアチア語」をまったく使ってないので、説得力のないこと、この上なし。

最近は「翻訳アプリ」なんてのもありますけど、店先でやられるのは迷惑千万でしょう。
あれはテーブル囲んで仲間や友達で使うにはいいけど、忙しい店でやられた日にゃあ、イラつくこと必至。
タクシーなんかでもあまり便利とはいえないので、できることなら諳んじて自分の言葉で伝えたほうが好感です。
忙しいのに、アプリ差し出されても、ねえ。

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エコロジー・バスで『ST2』に戻り、『Bellevue Hotel(ベルビュー・ホテル)』で預けておいた荷物をピックアップする。
バスの時間まではまだ少し余裕があったので、バゲージ・ルームのカギを返し、レセプションで尋ねた、

「ここって、Wi-Fi繋がりますか?」

「繋がると思うよ、宿泊のお客さん用に」

「レストランでコーク頼んで、Wi-Fi繋いでもいいですか?」

「いいけど・・・、レストラン自体が今の時間営業してないんだ。
 かまわないからレストランのテーブルで繋ぎなよ。バゲージ預けていたから君もお客さんだし」

「あはは、それはうれしいです、ありがとう」

レセプションの年配男性は優しくそう言ってくれた。
確かにバス・チケットを購入した客はこのホテルに荷物を預けるようにいわれ、
どういう経緯でそうなっているのかはわからなかったが、その厚意には甘えることにした。

電気が消え、薄暗くなっていたレストランのテーブルでPCを開く。

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「スプリットの宿はすぐ埋まっちゃうから気をつけたほうがいいわよ」
ザダールのホステルで例のフランス・ペアにそう言われていた。
人気の観光地だけに安宿がすぐに埋まってしまうらしい。
バスは21時頃にスプリット到着することがわかっていた、そうなるとすでに夜遅く、
そこから宿探しとなると彼女たちの忠告通りになりそうで、気がかりになっていたのだ。

ザダールを発つ前にスプリットの宿のブッキングを入れておけばなんてことはないのだが、
湖の状況もスプリット行きのバスの状態もわからなかったので、予約を入れることはせず、軽く調べるに留めていた。
目星をつけていた宿にネットで予約を入れ、PCを閉じた。

「ありがとうございました」

「どうってことないさ。機会があったら今度は泊まっていって」

「何度でも来たい場所ですから、次は泊まりましょう」

握手をして、荷物を担ぎ、バス停に向かった。

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18:20、バスはザダールに帰って来た。

「帰って来た」と記したが、今朝発った所に戻ってくるのは妙な感覚で、
宿と旧市街の行き帰りに立ち寄っていた場所なので、やけに親しみがあり、妙な感じはさらに高まっていた。
半分以上の客を下ろし、新しい客を少しだけ乗せ、18:40、ザダールと2度目の別れとなった。

19:30、スクラディンの街でわずかな客を降ろし、20:45、定刻通りスプリットに到着した。

長距離バス・ターミナルのすぐ隣りには鉄道駅、眼前の波止場にはフェリー・ターミナルがあり、
それらを利用するのか、大きな荷物を抱えた旅行者が行き交っていた。
両替屋、土産物屋、雑貨屋、小銭を持った旅行者狙いか、客引きの声と垂れ流しの音楽がうるさい。
湖と異なった喧騒と人出が安心するようでもあり、煩わしくもあった。

波止場を左手に眺めながら、北側に5分ほど歩くとクルマが入れない大きな吹き通しの道があり、
左右手には高級そうなレストランやBARが連なり、テラス席を客が埋めていた。
レストランの装飾にもなっている背後の城壁はローマ皇帝の宮殿のものでそこが旧市街の中心となっているらしい。

目指す安宿はその城壁の中、地図も持たずアドレスだけではたしてたたどり着くことはできるのだろうか。


プリトゥヴィツェからスプリットへ
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第七夜 Water Paldise @Plitvice Lakes [Croatia]

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『P1』と呼ばれる小さな波止場から渡し船で湖の中心へ入っていく。

船を降りると多くの人の流れが左手方向、時計回りに進んでいく、
見どころが多い滝を早く見たいのだろうか、あるいは人の習性として時計回りに進んでいるだけかもしれない、
イベント会場や「ねずみーらんど」では右に回っていくのが行列を避ける裏ワザでもある。

渡し船を待つ間、頭の中に叩き込んだ公園内の地図を思い浮かべ、その流れと逆に反時計回りの遊歩道を選んだ。

山道や国立公園では遊歩道が狭く、有名な場所ともなれば歩行者渋滞が起きる。
ここプリトゥヴィツェも尾瀬や上高地のように木製の歩道が2対組まれ、歩行者が行き交うようになっているが、
人気スポットでは撮影会渋滞も起きるはずだ、
時間がないなか、家族連れに代わる代わる、カップルにイチャイチャと写真を撮られ、道を塞がれては怒るに怒れない。
あるいは泣きだしたら、道を譲ってくれるかもしれないが。

こうなったらランチもコーヒーも摂らずにレイク・サイドを走り抜けるか。
日頃、テニスで鍛えた足は伊達じゃないぜ、ただし持久力はゼロだから役に立たないけど。

それらを見越して、反対に回るとやはり人が少ない。

涼しげなミストが舞い、澄み切った空気が心地よい。
時折聞こえる家族連れの嬌声を除けば、ただただ水の音しかしない空間が広がる。
自分のペースでテンポよく歩くことができ、気に入った場所ではゆっくりシャッターを切る。
スロー・シャッターで水飛沫を紡ぎ、速いシャッターで水玉を捕まえ、遊ぶ。
ああ、いくら撮ってもどう撮ってもナニ撮ってもキリがないぞ、コレ。

来たかった場所、求めていた風景、歩いているだけで胸が躍っていた。

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第七夜 Plitvička Jezera @Plitvice Lakes [Croatia]

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係員に尋ねたところ、チケットを買うのには長い行列の後ろに並ぶしかない、ということだけがわかった。

どうやら事前にネット購入しておくのが常道だったらしい。
それを知らない愚か者たちが現地のチケット売り場で長い列を作っている。
旅先の下調べは最低限しかしないことにしている、
不要な先入観を持たないためにそうしているのだが、
そんなものはここではただの「情弱」に成り下がるだけのポリシーでしかなく、愚か者日本代表として黙って列に並んだ。

どこかでコーヒー休憩した際に読むかもしれない、とデイパックに入れておいた文庫本が救いになった。
ふふふ、こういう陽射しの下だとタブレットやスマホでの電子書籍は無力化するのだよ。
舗道に延々と連なる行列で路肩に腰かけ、文庫本に目を落とし、時間を忘れることにした。
スプリット行きのバスの時間は16:30、プリトゥヴィツェでの寿命は5時間ほどなのだから。

ザダールからのバスを降りたのが11:00、
バゲージを預け、行列の最後尾につけたのが11:30頃だろうか、
行列を消化し、2つしかない窓口でチケットを手にしたのは12:30だった。
入場チケットは180クーナと値が張ったが、「ねずみの国」よりはロマンティックであることは想像に難くなかった。

残り寿命は4時間となり、少しばかりめげそうになる、あるいは泣き出したら誰かが助けてくれたかもしれない。

さあ、美しき水の景観に浸る時間がやって来たぜ。

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第七夜 Main Theme @Plitvice Lakes [Croatia]

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―DAY7― 8月11日

7:30に起き、シャワーを浴び、残ったパンと淹れたてのコーヒーで軽めの朝食を摂った。

8:00にチェックアウト、スタッフに陽気に送り出され、バス・ターミナルに向かった。
「起こしてくれたら一緒に湖に行く」と言っていたハンガリアン・ダニエルに声をかけるが反応がない。
ブダペストからの長距離移動で疲れているのだろう、隣りのベッドで寝息を立てる彼を無理には起こすつもりはなかった。
まあ、「一緒に行く」といっても彼はバイクだし、あるいは「イキオイ」でそういったのかもしれないし。

バスは予定通り、8:30に出発した。

満席近く席は埋まっていたが、日曜日と異なり、ソールド・アウトではないようだ。
年配夫婦に家族連れなど、行き先が有名観光地だけあって、乗客はバックパッカーに限らない顔ぶれだ。

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ホステルの滞在と出会いがあまりに心地よく、ザダールとの別れは名残り惜しかったが、
本日は旅のメイン・イベント、前から見たかった『プリトゥヴィツェ湖』に挑まなくては。
日数に限りのある旅だからね。

8月5日に成田を発ち、6日にクロアチア・ザグレブ入り、
28日にトルコ・イスタンブールを離れ、翌29日羽田着となるので、
日程的には25日間を数えるが、到着日と出発日を除けば、3週間「だけ」の旅なのだ。

現地滞在日数は23日間、それで10ヶ国を巡ろう、なんていうのはけっこう愚かなる計画なのかもしれない。

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昨夜は海沿いの岩場に建つレストラン・バーのようなところに席を移し、3人で話を続けた。

酒に強いハンガリアンとハングクッ・アガシは2本目のビール・ボトルを頼み、
酒に弱い日本代表は初めのボトルの半分を二人に分け、
自分たちの背景や今やっていること、政治的な問題やそれぞれの国の宗教事情などを語り合った。

北京への留学経験があるハンガリアンはバイクで今朝ブダペストを発ち、次の街で彼女と合流し、クロアチアを巡り、
アメリカで英語を覚えたコリアン・ガールは2ヶ月間ヨーロッパを巡り、今夜の電車でブダペストに向かう、
そしてシンガポールで仕事をしていた元ツアーガイドのジャパニーズはバルカン10ヶ国を巡っている。

年齢も生まれも宗教も言語も異なり、偶然、ホステルで出会っただけの面々、
一方はブダペストを発ち、一方はブダペストへ向かう、
かたやアジアについて学んだ者がいて、かたや毎月その国を訪れる物好きがいて、それぞれ話しは尽きなかった。

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旅を記すにあたり、臨場感を大事にして地名は現地の人の言葉で刻んでいることをお伝えしておきます
ガイドブックなどではZadar=『ザダル』と記されてますが、現地では『ザダール』と呼ばれていて、
『リュブリャナ』は『リュブリャーナ』という感じ。
『プリトゥヴィツェ』はクロアチア語と英語ではスペルも変わり、音も変わる。
長い名前は現地でも言いづらいのかメンドウなのか『レイク(湖)』と素っ気ない表現される。
「地名記述がヘンだ」と違和感を抱かれた方は現地で確認してみてくださいませ。

日本語英語を避けたいこととこの日本語地名の問題がこの旅のラストで大きなドラマを生んでくれます。

蛇足ですが『ブダペスト』は旧市街『ブダ』と新市街『ペスト』が合わさり、この名に。
この時はふたりの話しに魅かれ、あらためて『ブダ』の街まで足を延ばそうか、と思ったほどでそれほどあの街は美しい。
地図を広げて考えたのだから、予定のない旅というのはいい加減で困ったものだ。

「そろそろ店を閉めたいんですが」

退屈そうにしていたウェイターがつっけんどんに言って来た。
日曜の夜ということもあり、他の客は捌け、テーブルには自分たちしか残っていない、時計は1時を指そうとしていた。

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「悪いよ、シェアでいいよ」

「いいのいいの、僕が誘ったんだから」

そういってダニエルは差し出したビールの代金を受け取ろうとはしなかった。

「じゃあ、代わりに明日、起こしてよ。僕もバイクで湖に行くよ」

「OK、それでいいなら」

そんな話しをしながらホステルに戻ると、セルビア人ダンナがクルマで戻ってきた。

「おお、3人でパーティかい?」

「わたし、そろそろ駅に行かなくちゃ」

韓国代表が忙しなくキッチンに置いてあった荷物を取りに行く。

「あ、駅だっけ。クルマで送っていくよ」

「いいねえ、女性は。親切にしてもらえて」

二人でヒヤカシの声をかけ、握手をして別れを告げる、それぞれがそれぞれの時間に戻るときがきたようだ。

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バスはノン・ストップで走り続け、きっちり2時間半の11:00に到着した。

西側の『Ulaz2』と書かれた「入口2」で降り、すぐ目の間の小屋でスプリット行きのバスの時間と料金を尋ねた。

「増便されているけどラストは16:30、150クーナよ」

「じゃあ、それを一枚」

帰りのバスを確定させ、ひと安心、しかし4時間ほどかかる道のりなので今夜の宿に不安が残る。
通常、安い宿から埋まっていくので暗くなってからの宿探しは「Fully(満室)」で高い宿を掴む可能性もあるのだ。
幸い、週末ではないので「宿無し」になることはないだろうが。

「このチケットを見せれば、ベルビュー・ホテルにバゲージ預けられるわよ」

あまり英語が上手じゃないバイトの女のコだったが、丁寧にそう教えてくれた。
どこかで有料の荷物預けを使うつもりだったので、これはうれしい情報だ。

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教えてもらった『Bellvue Hotel』を見つけ出し、レセプションでチケットを見せるとバゲージ・ルームのカギを渡された。
「勝手に置いて行って」というシステムらしく、後から来た他の客がこちらの後ろについてくる。
「ここかな?」「ここだろうね」そんなことを話しながらバゲージ・ルームのカギを開け、空いたスペースに荷物を置いた。

湖歩きに必要なカメラとレンズと水はデイパックに用意してあったので、後から来た客にカギを委ね、ホテルを出る。
不用心なスタイルではあるが日々、こうして利用者の善意で動いているのだろう、
山小屋式というか、こういうところの手順は煩雑でなく、機械的でもないほうがいい。

レセプションで聞くと入場チケットは公園入口まで行けばそこで買えるらしい。

おお~、麗しき『プリトゥヴィツェ』にもうすぐたどり着くぜ、と心躍らせる。
晴れ渡った空から降り注ぐ陽射しは今日もサングラスがないとツライ強さだったが、
山あいのため、気温はそれほど高くなく、人の流れに合わせ歩いているとなびいてくる風が心地よかった。

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こちら側の公園入口は園内を循環しているエコロジー・バスの「ST2」にあたるらしい、
広い舗道を電動バスが静かに行き交い、多くの人を降ろし、多くの人を乗せることを繰り返していた。
その手前に係員がいて、なにかの標識を手に、行き交う客に説明をしている。
ドコでチケットを買うのか、彼女に近寄って尋ねようとした。

その横には恐ろしい長さの行列が続いてた、公園入口の手前にある山小屋仕立てのチケット売り場から。


ザダールからプリトゥヴィツェへ
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第六夜 Beachside Talking @Zader [Croatia]

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夕方になろうかという時刻にも関わらず、気温は落ちない。

ホステルの目の前にあるビーチにでも行くかとタオルと着替えを取りにベッドに向かうと、
上のベッドの住人に話しかけられた。

「やあ、海に行くの?」

「うん、まだ日差しがきついからね。海辺で休憩しようかと思って。アナタはベッドで休憩?」

「読書中、この時間はまだ日差しがきついから出かける気にならなくて。日本の人?」

「そうだよ。そう、熱いからビーチにでも行こうかと思い直したところで。アナタは?」

「ルクセンブルグ人。へえ、日本人で英語を話す人はめずらしいね」

「そう? ルクセンブルグに負けない小さいサイズのシンガポールで仕事していたことがあるから。
 やっぱりバカンスでここへ? 長い滞在なの?」

さきほど送り出したベルギー人たちのイメージが重なり、そう尋ねていた。

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「今回は4日間だけだから『バカンス』というには短すぎるかな。そちらは?」

「生憎、日本には『バカンス』という制度はないからね。
 フリーランスという立場だから30日かけてバルカン半島を回るんだ」

「旅は好き? 僕はSEの仕事をしているんだけど土日に休みをつけられるとどこかに行くことにしているんだ。
 周りは『何しに行くの?』とか『疲れるだけだ』とかいうけど、
 僕は少しでも休みがあると旅に出て、リセットすることにしてるんだ。
 旅先で特にナニをするわけじゃないけど、じっとしていると破裂しそうでね」

旅は学生だけの特権ではなく、こうして30才、SEという独身男性がフラリと旅に出ている例もある。

「わかるよ、アタマもココロもね。ずっとデスクに、ずっとPCに向かっているとオカシくなりそうで。
 旅は目的がないといけない、みたいにいう人は多いけどそうじゃないよね。
 うん、そのリセットする感じ、同じ感覚だな。じゃあ、ザダールでリラックスしてまた仕事に戻るわけだ?」

「そう。キミもそういう感じ?」

「う~ん、コチラは仕事半分+旅半分かな。ガイドブックや雑誌の記事を書くライターの仕事をしているんで、
 アチコチ行って、ネタ拾って写真撮ってという感じ。
 まあ、旅している間は収入もないけどね、時折、長い旅に出ないと感覚がね」

「収入も大事だけど、自分を取り戻すのも大事だよ」

ベッドの上と下で不思議な交流を重ねているとドヤドヤと大勢がチェックインし、ドミトリーのベッドが埋まっていった。

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8人組はブラジル人、ポーランドに留学していて、夏休みの旅行でここに足を延ばしたらしい。
隣りのベッドにはヘルメットに革ジャン姿の男が長距離ライドで疲れたのか、着くなりベッドに倒れ込んでいた。

「え! アナタ日本人なの? ワオ!クールね! 『ナルトゥ』『ドゥラゴンボール』、ワオ」

「ははは、マンガはクールだけど、おれはクールじゃないよ」

「いやあ、アナタもクールよ~」

学生特有のものか、ブラジル人の血のせいかわからなかったが、やけにテンションが高い。

今やヨーロッパでは書店に『マンガコーナー』があるほどポピュラーで若者に浸透しているカルチャー、
もはや『ナカタ』や『ホンダ』より『ゴクウ』や『ツバサ』のほうが有名で人気も高い。

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住宅街の南端にあるホステルの路地を出ると、その先は小さな岬のように海に突き出ている。
左手前がヨット・ハーバーになっていて、奥に進むと砂浜が広がり、子供たちが波打ち際で嬌声を上げていた。
右手はアドリア海に面していて厳しい岩場が続いている。

水に入る気はなかったので、タオル片手にブラブラと歩き、アドリア海に傾いていく陽光を浴びていた。

暗くなってからキッチンで夕食を調理した。
当然、昨夜と同じメニューになったが、明日の移動を踏まえ、食材を使い切ったので大盛りサイズが出来上がった。

食後にコーヒーを淹れる。
切れていたコーヒー豆を補充してくれたようで「勝手に飲んでね」というウレシイ言葉をもらっていた。

「いい香りしているね」

キッチンにセルビア人ダンナが顔を出す。

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「コーヒー、勝手に飲んでいるよ。飲む?」

「コーヒー、ニガテなんだ。あ、新しいお客さんの彼女、飲むかな?」

彼に促され、入ってきたのはアジア系の女のコだったが、キレイな英語で彼と話していた。

「ニホンジンデスカ?」

こちらを見た彼女の第一声は日本語だった。

「ハングクッ・サラン?」

咄嗟に韓国語で聞き返した、彼女の「日本」の発音が韓国人のソレだったのだ。

「え~、ナニ~」

お互いゲラゲラ笑い合う、それはそうだ日本語の韓国人と韓国語の日本人、それにここはクロアチアだ。

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カップに注いだコーヒーを渡し、英語で話しを続けた。
大学4年生の彼女は2か月ある夏休みを利用してのヨーロッパ旅行、
ここザダールでは今朝まで友達と城壁内のアパートメントを借り、短期滞在していたらしい。
その友達が昨日発ち、自分は深夜2時の列車でブダペストを目指すのだが、
出発までビーチでのんびりするつもりで、このホステルにデイユースできないかと飛び込んできたらしい。
「ベッドはないけど、出発まで荷物置いてゆっくりして」とセルビア人ダンナに親切にしてもらった、とのこと。

う~ん、こういうところが居心地いいんだよな、この宿。

こちらが『毎月ソウル』を重ねていること、彼女は大学の授業で日本語を習ったこと、
新村(シンチョン)の大学でまだ就職も決まってないけど旅に出てしまったことなどフランクに話しを重ねた。
英語がキレイな理由はどうやらアメリカに留学経験があるようだ。

「ねえ、『東海』なの? 『日本海』なの?」

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それぞれ韓国語と日本語に言い直された奇妙な質問が飛んできた、ふと見るとキッチンのドアに背の高い男が立っている。
先ほど着くなりベッドに倒れ込んだ革ジャン・ライダーだ。

「ダニエル、ハンガリー人デス」

質問の答えを待つまでもなく、握手の手を差し出してきたので、その手を握りながらこちらから詰問してみた。

「なんでハンガーリ人がそんなややこしいこと知っているのさ?」

「あはは、ヘンな質問をしてゴメンネ。日本人と韓国人が同じテーブルにいたからジョークに思いついたんだ。
 いや、東洋文学の専攻でね、北京大学にしばらく留学していたんだ。だから韓国と日本にも興味があって」

「若い世代はあまりこだわってないと思う。『独島』の問題はちょっとむずかしいけど」

おもむろに韓国代表が答える。

「で、日本代表の回答は?」

「『独島』にしろ『日本海』にしろ『尖閣列島』にしろ『北方領土』にしろ、一般の人は考えてもないね、
 学校で触れるわけでもないので、領土問題もその背景とか歴史時代を知らない人がほとんどだよ。
 韓国ほど熱心でもないし、日本ではそれほど政治とは距離があるからね」

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「ごめん、ホントふざけて質問したんだ」

「ヘンなハンガリー人だな」

「ねえ、コーヒーじゃなくて、ちょっと飲まないかい?
 すぐそこ、出たところに海辺にテラスBARがあるらしいから、場所を変えてそこでビールでも飲まないか。
 もっといろいろ話もしたいし、ビールぐらいはオゴるよ」

ザダール、ホステルの夜はまだ更けない。


Beach at Zadar (旧市外・城壁は北西側)


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第六夜 Sunday Afternoon @Zader [Croatia]

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―DAY6― 8月10日

昨夜は日付が変わってからも「夜のザダール」を堪能していた。

特にナニをしたわけではないが、夜の城壁内の写真を撮りたくて狭い路地、暗い通りをくまなく歩き続けた。
古い城門や教会を眺め、路上に置かれたテーブルのレストラン客と会話を交わしながら、写真の枚数を重ねた。
ここでは日本人自体がめずらしいのか、擦れ違うごとに声をかけられるような有り様だ。

なにげなく暗い隘路に入り込むと向う側から来た男に突然、声をかけられた。

「よう」

相手はアイサツしながらこちらに寄って来る素振りを見せている。
ただの酔っ払いなのか、あるいは葉っぱでも吸ってトンでいるのか、暗いのでそれがわからない。
あるいは単に日本人に興味を持って声をかけてきただけかもしれなかったが、暗さで相手の表情もわからなかった。

「ナニしているの、こんなところで~」

「ジャポーン」とか「コニチワ」とか、こちらを日本人と知っての声のかけ方とは明らかに違っていた。
薄暗闇で181cmのこちらよりもデカイオトコということだけがわかった。

(しまった、調子に乗って奥まで入り込みすぎたな)

人ふたりが擦れ違うぐらいの道幅に遠めの電球の灯りしかないような裏路地。
後ろに逃げるか、相手にぶつかって向うに逃げるか、次に起こる「ヤバイ」ことに対して、予想を打ち立てていた。

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「ボク、ボク、こんばんは~ヨ」

「え~~、マスターだったの?」

握手の手を差し出してきていた相手は、宿のセルビア人ダンナだった。

「そうよ~、ボクだよ。ナニしているの、こんな暗いところで」

「写真撮って歩いていたんだけど、ギャングかと思ったから逃げようかと思ったんだよ」

「あ、だから身構えたんだね。ザダールは安全だから心配ないけど気をつけてね」

いくら城壁内の旧市街が狭いからといって、暗い路地裏で知り合いに会うかね、あー、ビックリした。
酷く高鳴る鼓動を感じながら、その後は人の行き交う通りだけに足を踏み入れることにした。
といいつつ、深夜2時頃、旧市街から宿へ向けて住宅街を30分かけて歩いて帰ったバカがいるけど。

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買っておいたパンをキッチンで調理し、カンタンな朝食を摂った。
テラスに出るとアドリア海を照らす陽光が眩しい。
ここに来てまだ雲を見てない、というほどザダールは快晴で覆われている。

昨日の夕方、バス・ターミナルで両替した際、プリトゥヴィツェ湖行きのバスの状況も尋ねていた。
出てきた答えは「明日はどの時間も全便満席」というもので今日のプリトゥヴィツェはあきらめざるを得なかった。
日曜ということでバスも混んでいるのだろう、それに加え行楽客も向かうであろうから、
この日曜を避けることには大きな意味があるように思えた。

ここザダールが気に入っている、ということもあって、今日発てないことはそれほど悔やむことにはならなかった。

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もう一泊することを告げ、ドミトリー2泊分319クーナ(≒6200円)の代金を支払うと、
ちょうどそこに昨日のフランス・ペアが降りてきた。
ちなみにこの街の宿泊には「観光税」が付帯するらしい、それもキチンとスタッフに告げられた。

「これから旧市街に行くけど、乗っていく?」

「乗っていく、乗っていく。あ、できるなら旧市街じゃなくてバス・ターミナルで降ろしてもらえる?」

ということで彼女たちのクルマに乗せてもらい、中間地点のバス・ターミナルで降ろしてもらった。

「メルシィ・ボクゥ、サヴァ!(ありがとう。じゃあね)」

「Ca va bien! また宿で!」

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彼女たちのクルマを見送り、またまた小さなチケット売り場へ向かう。
ザダール~プリトゥヴィツェの往復チケットが165クーナと大きく割安だったが、
先行きを考え、105クーナの片道チケットを頼んだ。
「どの時間も空いているわよ」昨日と違い、席はごっそり空いているらしい。
あっさりというぐらいカンタンに明日、月曜8:30のバス・チケットを買うことができた。

ひとまず明朝、この街を発つことが決まった。

歩いて15分の旧市街に向かうとほとんどの店は閉まっていた。
カトリックの影響が強い南ヨーロッパの例に漏れず、ここクロアチアも日曜は「休息日」、
CAFEと食堂がチラホラ開いている程度で観光客目当てのローマ兵も手持ち無沙汰の様子。

昨夜の喧騒もどこへやら、ひと気はなく、石の路面がひときわ白く眩しい日差しを跳ね返している。

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教会だけがチラホラと人を吸い込んでいく、日曜日なのでミサが行われているのだろう。
午前中から熱い日差しの下を歩き、たっぷりと汗ばんでいたので、
日差しから逃げるようにそのあとに続き、礼拝堂の後ろのほうで木のベンチに腰掛け、静かな時間を過ごした。

ミサを終え、早めのランチにピッツェリアでホットドッグのセットを購入し、広場に腰かけ、頬張った。
飲み物とフレンチフライがついて25クーナ。(この時のレートは1クーナ≒20円)
ガラスケースで切り売りしているピザが15クーナなのでちょっと観光地プライスかな。
街なかで500mlの水を買うと7クーナ、スーパーで1,5Lの水が4クーナ、
便利なものは高く、日用品は安いヨーロッパらしい極端な値付けだ。

昨日、スーパーで買い込んだ自分の足のサイズより大きいステーキが500円もしない。
袋詰めのライ麦パンと日本で見かけないようなチーズを買い、これが2回分の夕食になる。
宿のキッチンでステーキに齧りついていたら
「肉、そんなに安いの?おれもそうしようかな」と食いついてきたヤツがいたっけ。
キッチン付きの宿を選ぶとバジェット・トラベリングでも充実の食生活が送れるのだ。

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閑散とした城壁内に飽き、日が傾きかけた午後はビーチで寛ぐかと、ホステルに戻った。

「やあ!あれ?日本の人?ああ、でもあまり話ししている時間がないや。忘れ物、するなよ!」

学生風の3人組男性が出発するらしく、互いの荷物をチェックしている。

「そうです、日本人デスヨ。これから出るの?時間なくて残念だね」

「これから空港。帰るんだ、ベルギーに。今日で『バカンス』も終了さ」

学生に見えた彼らはSEらしく、9日間の夏休みでここに居続けたらしい。

「ああ、今日、日曜だもんね。明日はオフィス?」

「そう、夢の時間はオシマイ。でもアドリア海を満喫したから仕事に戻るよ」

「100%オーバー『充電』したなら仕事もダイジョウブだよ! Bon Voyage!」

「いい旅を」という意味のフランス語で彼らを送り出す。
チェックアウトの手続きをしたセルビア人ダンナとタクシーが行くのを一緒に見送った。

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「昨日は驚かせたね」

彼らが去り、静けさが戻ったテラスでセルビア人のダンナが言う。

「あはは、あんなところで会うとはね。ホント、驚いた。
 あ、そうだ、これから行くセルビアの情報を教えてください」

「お安い御用さ、ベオグラードはキレイな街だけど、どうせなら地方がいいよ。みなホントに親切なんだ。
 僕はベオグラードのとなり街出身なんだけど、妻とセルビアを旅したとき、本当に親切な人ばかりに会ってね・・・」

それからしばらく地図を広げ、コーヒー片手にアレコレ教えてもらった、旅先の情報、現地の人に勝るものはない。


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第五夜 Nuit de Vacances @Zader [Croatia]

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タクシーを降り、一人で城壁内に進むと賑わいが出迎えてくれた。

城壁内のメイン・ストリート『シロカ通り』は昼間の観光地のごとく人が溢れていて、狭く暗い路地にも人が行き交っている。
ヨーロッパらしく遅めの夕食を終えた人たちの腹ごなしのお散歩か、あるいは食後の一杯を呑みにお出かけか、
それにしては人が多過ぎないか、そうか土曜の夜だからか、こんな時に宿でじっとしているほうがどうかしているか。

昼間はビーチでくつろぎ、夜の時間をこうして楽しんでいるのかな、祭りでもあるかのような大勢の人出だ。

『フォーラム』と呼ばれるローマ時代の広場では腰かけてワインを飲む人がいたり、ピザをかじる家族がいたり、
二人きりの世界に浸るカップルがいたり、駆け回る子供がいたり、はたまたその子供狙いのおもちゃ売りがいたり。
こちらも食後のドルチェにジェラートを買い、食べながら彼らの間を歩き、
『シー・オルガン』と呼ばれるこの街の名物でもある海辺を目指した。

海沿いにはナイト・マーケットが並び、地元の名物や土産物、バーベキューやホットドッグが売られ、
観光客の足を止めている。
樽で作られた即製メリー・ゴーラウンドでは子供が喜声を上げ、
突堤のハデな照明と音楽の仮設クラブでは若者が奇声を上げていた。
日付も変わる時刻だというのに行き交う人の数と賑わいは眠気を見せない。

「バカンス・シーズン」「ビーチ・リゾート」「ハイ・シーズン」「ウィーク・エンド」・・・雰囲気だけでもお楽しみを。

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宿への帰り道、我が愛車と同じ佇まいを見せるこいつにひょっこり出会った。

そういえばフランスの石畳を走るこのフランス娘に魅了され、
長い一目惚れを経て、ようやく手に入れ、今もこの相棒とのコンビが続いている。
まさかクロアチアで出会うとは・・・やっぱりこのコには石畳が似合う。


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第五夜 Shared Taxi @Zader [Croatia]

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暗くなった頃、タクシーを呼んでもらい、4人で城壁内の旧市街へ向かった。

車窓から道行きを確かめていると宿からバス・ターミナルで15分、
バス・ターミナルから旧市街へは15分という距離感で、歩けないことはないかな、と考えていた。
城壁前でタクシーが停まると代金の40クーナをフランス人が立て替え、降りてからそれぞれが10クーナを差し出した。
この距離で約200円なら悪くないタクシー・シェアだ。

「じゃあ、また宿で」

そういうとそれぞれが土曜の夜の賑わいに溶け込んでいった。

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「おう、いらっしゃい」

汗を流しながらホステルの門をノックすると駐車場を兼ねた庭先で談笑していたヒゲの濃い男に招き入れられた。
表だというのにソファーとテーブルが置かれていて、3人の女性がグラスを傾けている。

「チェックインお願いします。なんかジャマしちゃったかな?」

「いや、彼女らもチェックインしたばかりでくつろいでいただけだよ。わ、日本人?この宿初の日本のお客さんだよ」

そのセリフ、どこかで言われたな、と思いつつ、「初の日本人」に驚きはなかった。
なにせ「2か月前にオープンしたばかり」という情報だったのでこのホステルに狙いをつけて来たのだ。
ネット予約のリファレンス番号を告げる。

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ホテル予約サイト【ホテルトラベル】


「今、PCが調子悪くて、記録を確認できないわ。だから支払いも後でいいわよ。ベッドはすぐには入れるわ」

「こちらは両替してないから助かるけど。パスポートでも預けておこうか?」

「そうしてくれるとうれしいわ。実は昨日オーストラリア人に逃げられちゃったの」

どうやら手続きをしてくれているのがクロアチア人の奥様、ヒゲの男性はダンナでセルビア人、
若い夫婦でここの経営をはじめたばかりだそうで、まだ宿経営に馴れておらず、
オーストラリア人に宿代を踏み倒されたようだ。
そしてワインを飲んでいたのは今宵タクシーをシェアすることになるフランスの女の子2人組というわけ。

「ベッド、案内するわね。1階は女性用のドミとキッチン、あなたのベッドは2階よ」

彼女に続くとシャワーやロッカーなどの説明をしてくれ、最後にドアとロッカーのカギを渡された。

「門限はないけど、基本、ドアはカギを閉めてね。それと昼はオフだけど夜はエアコンが入るわ」

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案内された2階には真新しい二段ベッドが4つあり、入口の脇の床にはダブルサイズのマットレスが敷かれている。
壁の片側には大きい個別のロッカーがあり、キャスターバッグも楽に入る。
天井からは大型液晶テレビが下げられていて、Wi-Fiもしっかり強い電波が飛んでいた。
どうやら10人用の男女相部屋らしいが、「ドミトリー」と呼ぶにはあまりにキレイ過ぎて、
自分で引いたクジが大当たりだったことを喜ばずにはいられなかった。

荷物を置き、すぐに下に降りた。
(上の写真が我がユニット・チーム。ニューメキシコ・アラモで買ったリュックタイプの黒いキャスターバッグと、
カンボジア・シェムリアップで買ったデイパックにはカメラバッグとPCを入れ込んである)

「あなたもワイン飲む?」

「うれしいけどアルコールダメなんだ、酒はニガテで。キッチンでコーヒーもらっていいかな?」

「インスタントしかないけど気軽に飲んで」

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コーヒーを口にしながら、もらった市内地図で近隣の情報を教えてもらう。
どうやらバス・ターミナルの裏手にもっと大きなスーパーがあるようだ。

「アナタ、ドッチから来て、次はドッチに行くの?」

フランス人の女のコに聞かれるが、彼女たちは英語があまり得意じゃないようだ。

「今朝、リュブリャーナを出てきて、ここにいる間にプリトゥヴィツェ湖に足を延ばそうかと思ってるんだ。
 ここを拠点に往復してもいいかなって。だから予約の2泊以上滞在するかも」

「あら、延泊するならうちは歓迎よ。彼女たち、プリトゥヴィツェから来たって」

マダム、と呼ぶには若い女主人がジョーク混じりにそういう。

「湖の滞在はヒドかったわ。雨が降って寒いし、もうサイテイよ」

どうやらザグレブであったあの雨の日、彼女たちはプリトゥヴィツェ湖にいたらしい。

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「そんなにヒドかったの?宿はどうしたの?向こうで取れるかな?」

「わたしたち、テントに泊まったのよ。あの辺はホステルとかないし、最初からそのつもりでテント持参していたの。
 それがあの雨でしょ、テントの中まで寒くて寝られたもんじゃなくてクルマで寝たわ」

「その時、ザグレブにいて、朝、雨が降ったから湖に行くの止めたんだ」

「あなた、行かなくて正解よ、ツイてるわ。
 雨で湖はすっかり濁っちゃったし、なにしろ寒かったことしか覚えてないわ。
 だからわたしたち、暖かくてキレイなこの海辺でのんびりすることにしたの」

「あら、そうなるとこちらも長めの滞在かしら。うちは大いに歓迎よ」

ワインのせいかもしれないが、女主人の声が明るい。

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「そっか、やぱりあの辺は安宿ないんだね。ちょっと計画練り直さないと。
 となると湖の後、スプリットへ抜けたほうがいいのかもね」

「スプリットならわたしたち行ったから、いい宿教えるわよ。地図持ってる?あ、宿のカードがあったかも」

彼女たちはフランスをクルマで発ち、南からクロアチアを巡っているらしい。

「わ、うれしいな。教えてもらうよ。
 あ、そうだ、クーナ持ってないから、そろそろ両替がてらバス・ターミナルへ行かなきゃ」

「ねえ、アナタ、夜は旧市街へ行くの?」

「買い物して戻ってきて、夕食食べたら行くつもりだけど?」

「タクシーをシェアしない?今、その話しをしていたところなの。
 初乗りの40クーナで行けるみたいだから4人いたらバスより安上がりよ」

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ここから旧市街へは少し距離があり、バスの本数は驚くほど少ないため、タクシーで行くことが多いそうだ。
ただし流しのタクシーはいないので、電話で読んでもらうか、予約を入れておくらしい。
2人のフランス人女性はスタッフにそう教えてもらったそうで、そこからこちらにシェア話を持ち掛けてきたのだ。
彼女たちはクラブかバーで呑むつもりなので、自分たちのクルマは置いていくのだろう。
それ以前にすでに彼女たちはこのテラスでワイングラスを傾けているわけだが。

「OK、その話し乗った。で、ココに何時に来ればいい?」

「わたしたちはこれからビーチに泳ぎに行って、帰ってきてシャワーを浴びて・・・だから、9時でどう?」

「ウィ、まどまぜる」

快諾するとすぐに部屋から出てきたマンチェスターから来た男性が加わり、あっさりと商談は成立した。


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第五夜 Aim the Adriatic @Zader [Croatia]

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―DAY5― 8月9日

7:50、シリアルとコーヒーで軽めの朝食を摂り、チェックアウトした。

宿を出た大通り沿いにこじんまりとしたスーパーというか雑貨店のようなものがあり、重宝していたが、
今朝は土曜ということもあり、もう使えないだろうな、と思っていた。
ところがなんとすでに開いている、土曜の朝から営業しているとはなんとも精力的だ。
バス・ターミナルは小さすぎて期待できないので、ここで水や軽食をここで買っていくことにした、
8:10のバスなので時間には少しばかりゆとりがある、なにせ5時間半のバスの中にいなくてはならないからね。

店内に入るとガラス・ケースの向うに白い割烹着のオバサンがいて、客にパンを包んでくれている。

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「このクリーム、って書いてあるやつ、そう、その一個だけ残ったやつ下さい」

「これね。わああ、あらら」

オバサンがデニッシュをトングで掴んだ瞬間、どういうわけかそいつはすっ飛び、ガラス・ケースに舞い当たった。
その瞬間、お互い顔を見合わせ、次には吹き出して笑っていた。

「デニッシュ、生きてたね」

英語は通じてないが笑顔は通じている。
オバサンはもうしわけなさそうにラスト一個のデニッシュを掴み直す。
身振りで「ほかのにチェンジしようか」といってくれているようが、下に落ちたわけでもないので気にしなかった。

「OK、OKデス。そのままください」

「ゴメンナサイネ~」

おそらくスロヴェニア語でそういっているのであろう、こちらの英語とはかみ合ってなかったが理解はできていた。

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首都、となると行き交う人も多く、擦れて無愛想、素っ気ない人が多くなるのだが、
スロヴェニアの人たちは明るく快活で朗らかで、居心地もよかった。
ザグレブはホームレスも多く、小銭をねだられることもあったがここではそんなこともない。
あちらの首都では小雨交じりの曇り空が続いたので割増しでそう思わせたのかもしれないが。

お隣イタリアの血が流れているせいなのか、そういうお国柄なのか、あるいは国民性か、
首都とはいえ、この街が小さいからそうさせているのかもしれない。
スロヴェニアの首都リュブリャーナの滞在は短かったが悪い気に当たることがなく、
最後も割烹着のオバサンの笑顔で送り出される形になった。

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旅してわかってきたことは大都市には見るモノも多いが、流れ着く人も多く、必然、治安は不安定に。
小さな町は土着の人が多く、目が行き届くので、歩いていても安心感がある。
鍋料理は複雑で魅力的な味を醸し出すが、反面、ナニが入っているかわからない、
一品料理は美しくもあるが単調な味が続く、といったところか。

最後も公園前から『ビツィケリュ』の自転車を借り出し、バス・ターミナルへ向かった。
歩いても10分ほどの距離だったが、基本料金以外かからないなら借りない手はない、荷物も重いからね。
5分足らずで到着し、バス・ターミナル前にあるキオスク・スタンドに自転車を戻し、
一昨日降ろされたなにもない駐車場のような場所に荷物を置いて、バスを待った。

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ところがチケットにある「8:10」を過ぎてもバスそのものが来ないし、別の場所に停まっている気配もない。

「ザダル行きのバスはここでいいのかな?」

こちらが不安になりかけた頃、それよりも割増しの不安げな表情で男性が聞いてきた。

「うん、いいと思うよ。おれも待ってるんだ。プラット・ホーム番号はあっているし、他の客もいるし」

「だよね、待つしかないのかな」

「ザダル」という言い方をしていたことと雰囲気からするとドイツ系だろうか、こちらと同じように一人旅らしい。
彼だけじゃなく、他にも地面に荷物を置いたまま、不安そうにバスが来る方向を眺めたり、うろついたりしている乗客がいる。
こういう場合、不安げな表情の客がたくさんいるということは安心していいサインだ、
目的のバス自体が来ていないのだから、腰を据えて待っていればいい、イラつくのは他の人たちに任せて。

8:15、ようやくバスがやって来た。

オイオイ出発時間過ぎてるぜ、とツッコみながら、ラゲージを下のトランクに放り込む。
5分後に無事バスは出発したのだが、この遅れの原因は後で謎解きがされることになるわけで。

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バルカン・エリアもヨーロッパ同様、長距離バスは快適だ。

ツアーでヨーロッパを訪れる客を乗せる観光バスと同じサイズ、
2+2の座席が10~12列ほどあり、後部ドアがあり、そこにはトイレがついているものもある。
ツアー利用だとトレイを使わせてくれるが、長距離バスの場合、使えないことがほとんど。
なにせトイレ掃除はドライバーの役目なので、それを嫌ってクローズしているのだ。
「トイレ休憩で済ませるように」というのが長距離バスの暗黙のルール。

海外専門ツアー・コンダクターをしていた頃、
どこの国のバス・ドライバーも「日本人を乗せるのは好きだ、というか日本人客はベストの客だ」と口をそろえて言っていた。
こちらが日本人ツアー・ガイド(英語。「ツアー・コンダクター」は日本語英語)だから半分は社交辞令かもしれないが、
「日本人のツアー客は降りるとき、ゴミを持って降りてくれるし、車内でお菓子やフルーツを食べても汚さない。
 中には飲み物をこぼした床を拭いている人がいて、本当に驚かされた」
事実、ツアーのお客さんはいわなくても自分のゴミはホテルやトイレ休憩場所に持っていって、捨ててくれる。
身の回りは小ざっぱりとしておきたい日本人の国民性だろう。

ツアー・バスの場合、「バスは自分のもの」というドライバーが多い、言うなれば日本のトラック運転手みたいな感じ。

1台1千万円ほどするバスの車内清掃は自分の仕事であり、バスのメインテナンスも当然、自分の持ち出し。
なので、上記のお世辞にもつながるわけですね、汚されて喜ぶドライバーはいない。
反面、その頃、増えはじめた中国人グループには
「食い散らかして、床はゴミだらけ。一日中、ず~~とうるさいし、アヒルを運んでいるみたいだぜ」と文句タラタラ。
「二度と乗せたくない」とみなが口を揃えたように言ってましたからね、
中国人観光客が増殖しているのご時世、どうなっているのやら。

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峠を走り、10:00にトイレ・ストップ、標識には『METLIKA』と書いてあった、地名だとしたらロックバンドみたいな名だ。
(後で調べたらザグレブ方面へ迂回する高速をショートカットしたようだ)

トイレ休憩の後、すぐに国境があり、パスポート・チェック、ただし今回は車内で座ったまま。
いかつい係員が乗り込んできて、前から順にパスポートをチェック、顔写真と見比べて、ハイ、オシマイ。

車内はひとりが2席使えるような状態、横になっている人もいれば、スマホでゲームする人もいる。
こちらはあぐらで読書タイム、バスでの長距離移動の時間はそれほどキライじゃない。

海岸沿い狭い道をを走っていると「Zadar 80km」の表示が見えた。
あと一時間ぐらいか、と思った途端、クルマの流れが止まった。

8月上旬、海辺、週末、リゾート地、バカンス・シーズン・・・ 即ち「渋滞」ですね。

週末にアドリア海沿岸のリゾート・エリアにある各々の町を目指すクルマで混雑しているのだ。
海沿いは日本と同じようにカーブが多い対面通行の道が続き、伊豆半島の外郭を巡るような国道と変わりがない。
やむなく文庫本に目を落とし、ノロノロ運転に身を委ねた。

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結局、ザダールのバス・ターミナルには14時過ぎに到着した、6時間かかった計算か。

ふたたび現地通貨クーナが必要となるので、ターミナルの両替所でレートだけチェック、
城壁に囲まれた旧市街とは反対方向の東端にあるホステルを目指して歩いた。
南下してきたことと海沿いということもあり、かなり気温が高い。
バスの中で快適なエアコンに浸っていた身が、すぐに汗を吹き出しはじめた。

途中、古びた大型スーパーでクールダウンがてら水を買い、住宅エリアを歩くと15分で宿を見つけることができた。


リュブリャーナからザダールへ
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第三夜 Open Market @Zagreb [Croatia]

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ステンドグラスに別れを告げ、ふたたび激しい陽射しの下へ。

聖堂の前の入り組んだ道を少し歩くとニギヤカな青果市場に出くわした。
陽光の下、売り子の声と果物の色彩がひときわ元気だ。
「市場」は旅先の楽しみのひとつ、アジアだろうとEUだろうとイスラム圏だろうと、
屋外のマーケットは眺めて歩くだけで楽しい。

日常生活の邪魔者でしかない旅行者だが、ここでは少しばかり立場が変わる。
ホテルでかじりつくフルーツを選んだり、土産物を手に取ったり、
懐緩めの旅行者はあるいは上客の一人かもしれない。

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見慣れない色合いの野菜、自分の国と同じだが形やサイズが異なる果物、
ファインダー越しに興味深くそれらを覗いていると陽気にからかいの声が飛ぶ。

「そんなの撮ってどうするのさ」
(日本にはこんな色の野菜はないんですよ、そちらは見慣れているかもしれませんが)

「アンタ中国人かい? え?日本人かい?」
(日本人が英語を話したことに驚いているのか、はたまた日本人に見えない容姿に驚いているのかは不明)

「これ、買っていかないか、まけとくよ?」
(旅行者が山積みのトマト買ってどうするのさ)

彼らに気圧されないよう負けずに陽気に受け答えしながらも心の声は飲み込んでおく。

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隣の店では新鮮なキノコを手に、店のおばちゃんが常連さんに料理法をアレコレ説明している。
清潔にパック詰めされ、バーコードを通すだけの買い物は便利だけどね、
旬のものをどう調理するか、いつもと違う料理法を語らったりするのも市場ならではの良さ。
店員とのコミュニケーションをメンドくさがる国からやって来た者にはこういう市場はうらやましくもある。

ヨーロッパを訪れるとベリー類の種類が豊富なのでつい手が伸びる。

「おじさん、これいくら?」
小さな器に盛られたブラック・ベリーを差し出す。

「それなら10クーナでいいよ、今日はもう終いだからな」

「じゃあ、ください。あ、すぐに食べられるかな?」

「食べるなら後ろに水道があるから、そこで洗いな。これのほうが洗いやすいだろ」
そういってイチゴパックのような小ぶりのパックに移し替えてくれた。

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ともっともらしい会話を記しているが、市場のおじさんはおかまいなしにクロアチア語、
こちらも気に留めず英語でのヤリトリ。
まあ、身振り手振り、言いたいことは伝わるものなのです。
お金を払うといわれた水道でザブザブと洗い、水が垂れるままのベリーをポンポンと口の中に放り込んだ。
「ありがと! おいしいです、これ」
ムダな一言かもしれないが、おじさんにお礼の声をかけると親指を立てて応えてくれた。

汗を流しながら旧市街の坂を歩く、ベリーを口に含んだ瞬間だけ暑さが飛ぶような気がする。

小高い丘の上、旧市街の西側は『Gornji Grad(ゴルニ・グラード)』地区と呼ばれ、
『国会議事堂』や『首相官邸』、『歴史博物館』といった見どころが詰まっている。
なかには『失恋博物館』なんて変わりダネも。
城壁で囲まれていた名残でもある『Kamenita Vrata(石の門)』と呼ばれる礼拝堂には内戦を弔うため、
今も祈りのろうそくの灯が絶えないそうだ。(写真4)

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『Kuna Lotrscak(ロトゥルシュチャク塔)』と呼ばれるかつての見張り塔の足元には下の広場と丘の上を繋ぐケーブルカーが走っている。

そのケーブルカーを使わずにつづら折りの坂を下ると
目にも鮮やかな『Crkva Sv.Marka(聖マルコ教会)』に出くわした。
屋根の上の美しいタイルの装飾は右がダルマチア地方を表す紋章、左がザグレブ市の紋章。

ザグレブを象徴するこの教会の屋根を観たかったのだ。

日差しの強い時間のせいか、教会前の広場に人影はなく、しばらく貸切状態が続いた。
おかげで広場のど真ん中に荷物を下ろし、望遠レンズをセットしたファインダー越しに鮮やかなタイルを楽しむことができた。
う~ん、贅沢なひと時、できることならここに居座りたいぐらいだが、日なたがツライ。

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ふたたび坂を下り、『イェラチッチ総督広場』に近づくと路上にカフェが連なっている。

熱いこの時間でも路上の席が人気を占めているのはヨーロッパらしい光景。
ちなみに「CAFE」の本場、パリ・シャンゼリゼ通りでは路面の席がもっとも高く、店内は安い。
イタリアでも店内のカウンターでの立ち飲みがもっとも安く、地元の人はここで軽くエスプレッソなどを仕上げていく。
次が店内のイス席、そしてテラス席の順にコーヒーの値段は変わる。

店内で注文したコーヒーを手に、テラス席に腰かけ、ギャルソンに咎められている旅行者の姿を時折見かけるが、どうかそうならないように。
席によって提示されるメニューが違うのですね、CAFEでは。

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広場の周辺はテイクアウトのピザ屋が多く、若者や旅行者を集めていたが、
気を惹かれず、別の店でサンドウィッチとアイスティを注文、15+5,5クーナと安上がりな遅めのランチ。
パニーニのような形状だが、パンが固く、ヨーロッパらしい感じがいい。

午後もザグレブを彷徨ったが、小さなこの街はあらかた見尽くしてしまったようだった。

街の南側にあるバス・ターミナルへ立ち寄り、次の目的地スロヴェニア・リュブリャーナ行きのバスを尋ねると、
「午前中は6:50と11:30だけ」という素っ気ない答えが返ってきた。
カウンターを離れ、しばらく考え込んだが、早い便で次の街へ向かうことに決めた。

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「6:50のは87クーナよ」

どうやらバス会社が複数運航していて、時間帯や会社によって70~125クーナと値段もまちまちらしい。
あらためて尋ねると6時のバスは11時のそれより安いらしく、決断は悪くなかったようだ。

「じゃあ、それを1名分」

リュブリャーナ行きのバス・チケットが手元にやってきて、ザグレブを旅立つことが決まった。


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第三夜 Katedrala Merijina Uznesenja @Zagreb [Croatia]

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2つの尖塔が象徴的な『カテドゥラーラ・マリィイナ・ウズネセーニャ』。

ザグレブのランドマークでもある聖堂を日本語に置き換えると『聖母被昇天大聖堂』、なんとも難解な名称だ。
聖堂の中は暑さを忘れさせてくれる冷えた空気に包まれていた。
それほど豪奢ではないが夏の日差しを受けたステンドグラスが美しい。

観光名所も地元の人たちにとっては普通の教会、静かに祈りを捧げては静かに立ち去っていく。
かたや観光客は汗を拭いつつ、記念写真に夢中になっている。
フラッシュを光らせた無神経者がほかの観光客に「No Flash!」と咎められていた。

祈る神は持っていないが、しばしステンドグラスに魅了されることにした。

あなたにもそのひと時を。

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第三夜 Check-in to Croatia @Zagreb [Croatia]

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―DAY3― 8月7日

朝、激しい雨音で目が覚めた。

窓の外は薄暗く、時計を見ると6時を回ったところだが、潔くシャワーを浴び、目を覚ますことにした。
バスルームから出ると雨はピタリと止んでいた。
雨音がウェイクアップ・コールとはなかなか凝った仕掛けだ。

昨日は結局、30分近く迷い、ようやく宿を探し当てることができた。
示された住所にはホテルらしき建物はなく、民家と作業機械置場が軒を連ねているだけだった。
通りを遡り、あるいは路地に入り探してみたが、それらしい建物がない。
困り果てて近代的なオフィスビルに飛び込み、受付の男性に尋ねた。

「すみません、このホステル、ご存知ですか? この通り沿いにあるはずなんですが」

「ホステル? この辺にホステルなんかあったかなあ? アドレス分かる?」
言われるまま、ブッキングしたホステルのアドレスを伝えた。

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「確かにこの通りの名前だね。あ、検索してみよっか?」
こちらの返事を待たずに彼はカウンターの向こうでキーボードを叩きはじめる。

「ああ、通りの向こう側だ。このアドレス、間違えてるね」

「え。そうなの?」

「向かい側にあるんじゃないかな。見つからなかったらまた来てよ」

「ありがとうございます。ホント助かりました。でもまた来ないことを祈ります」

通りの向こう側に渡ると「ホステル」と書かれた小さな看板があり、目指す宿の名前が書かれていた。
う~ん、ブッキング・サイトのアドレスが間違っているってどうなの。

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看板のある入口から中の敷地に進むと、そこは無駄に広く、さらに奥まったところに受付らしい建物があった。

「チェックイン・プリーズ」

「いらっしゃい。あなたが日本のお客さんね、うちの宿初の日本人だわ」

「あはは、それは光栄です。でも見つけられなくて苦労しました」

「ネットの地図が間違っていたでしょ、訂正してくれないのよ、なかなか」

「そういうことでしたか」

「疲れたでしょ? 部屋入る? 前の客が早く発ったから部屋の用意できているわよ」
12時を回ったばかりだったが、もう部屋が使えるらしい。

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「それはラッキーです、ロングフライトでさすがに疲れたんで」

「じゃあ、入っていいわよ。カギはこれね。支払いはキャッシュ? カード?」

「カードで払います」

「カードだとユーロ払いになるけど、ダイジョウブ?」

「OKです」

2泊分の宿泊費54ユーロを支払う。
日本円にして1泊あたり¥3000ちょっと、これはシングル・ルームなのでしかたのないところだ。
クロアチアはユーロ導入されていないが、ところどころこういう風にユーロが使われているようで、
この後もちょくちょくこういう場面に出くわすことになる。

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街への行き方を聞き、近所のスーパーの場所を地図に記してもらう。
これは「チェックインの儀式」、ホテルだろうが、ゲストハウスだろうが、宿到着後、定番の質問だ。

横になると意識を失ってしまいそうだったので、荷物を置き、すぐにスーパーに出向いた。

部屋には冷蔵庫がなかったので、飲み物と朝食用のパンとヨーグルトだけを買い、店を出る。
プラスティックバッグ(コンビニ袋の英語)を部屋に置き、その足で市内へ出るつもりでいたのだが、
ベッドから発せられる誘惑の魔力から逃れる術がなかった。
気づくと窓の外はすでに暗く、辛うじてヨーグルトを口にしただけでふたたび魔の手に覆われた。
ロング・フライトの魔女に白旗。

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おかげで今朝はまだ暗い時間に目が覚めた、というわけだ。

到着まもなく今回の旅のメインテーマである『Plitvicka(プリトゥヴィツェ湖)』を早々にやっつけてしまおう、と企んでいた。
しかしそれは朝の雨で出鼻をくじかれた、というか大いに意欲をそがれてしまった。
湖を訪ねるにあたり、雨で清流が濁っていては興ざめでしかない。
ザグレブの宿を抑えたままの日帰り湖旅行計画は取り止めにして、市内に居残ることを決めた。
このあたりは一人旅の気楽さというか、いい加減さというか、だらしさなというか、怠惰というか。

コーヒーを淹れ、パンを頬張り、街へ出かけることにした。

トラム(路面電車)の停留所前にあるキオスク(売店のこと)で40クーナのプリペイド・カードを購入。
ICカード方式で車内の機会にタッチするだけ、1乗車10クーナで乗り換えも無料、とシステムはシンプル。
通勤客に紛れ、トラムで街の中心へ向かい、目に止まったザグレブ中央駅で降り、街の北側を目指した。

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エアアジア航空券にホテルをプラス - AirAsiaGo (エアアジア・ゴー) 

『トミスラヴ王広場』、『ストロスマエル広場』、『スリンスキ広場』と美しい緑が生える広場が真北に向かって連なっている。
日なたでは家族連れの子供たちが声を上げてはしゃぎ、木陰ではカップルや学生がのんびり昼寝している。
街の中心地だというのにみな自由にくつろぎ、好きなように過ごしているのが印象的だ。

眩しい緑が途切れ、「Zagreb」という名称の発祥地でもある『イェチッチ総督広場』に突き当たった。

丘の上の「旧市街」から見るとこの辺りが「溝」(=ザグレブ)のようになっていたから、との謂れ。
諸説あるらしいが、こういう古くから伝わる地名のエピソードはおもしろく、「語源好き」の探求心をくすぐる。
「XXが丘」とか「△△台」とか行政や不動産業者がつけた名がはびこる国は残念でしかない。
地名にはキラキラネームはいらないよね、由来があったほうが情緒があると思うのだけど。
ちなみに『Croatia』という国名は「クロアチア(山の民の意)人の国」に由来する。
7世紀頃、この地に流入してきた南スラブ系のクロアチア人の国というわけ。

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ひと気の多い広場を突き抜け、旧市街への坂を上がると、
背の高い『Katedrala Merijina Uznesenja(カテドゥラーラ・マリィイナ・ウズネセーニャ)』が出迎えてくれた。

熱い日差しを避け、聖なる日陰に進むとしよう。


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アドリア海沿いの車窓から from Split [Croatia]

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8月12日、スプリットからドゥブロブニクへのバスの中で記してます。

明けて6日、イスタンブールからザグレブに入り、
町外れでシングルを確保、まずはここに2連泊。

ザグレブは連日、朝のにわか雨があったせいか、どことなくくすんだ印象。
夜便の寝不足とフライトの疲れをあったので、
本来は王道であろうプリトヴィツェ湖への日帰り旅も敢行せず。

いつものように街をブラつき、怠惰に過ごすわけです。
ところがこれがあとからラッキーな結果を生んでいたことと判明。
だらしない旅人が産んだ幸運、そいつはまた後日の筆に。

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8月8日、2時間で行ける隣の首都リュブリャーナへ移動。

早朝、余裕をもって宿を出たものの、トラム(路面電車)が来ないこと来ないこと。
青くなりながら、2分前にバス・ターミナルに駆け込むドタバタ劇。

30分で国境に到着。
EU加盟国となったクロアチアだが、出入国手続きが必要。
なぜかは調べてみるとして、通貨に関してはユーロ導入条件を満たしていないため、
未だ『クーナ』という通貨が使われいるわけ、旅行者にはめんどくさい限り。

クロアチア出国、スロヴェニア入国のチョップが押され、
P/P(パスポート)ページが奪われていく。
しかも翌日はまたクロアチアに戻るのでまた出国&入国だわさ、
あ~ん、スタートをスロヴェニアにしなかったことをちょっと後悔。

朝9時、リュブリャーナに到着。(2ヶ国目)

ここではドミトリーにC/I(チェックイン)。
今回はこここから前日にネットでブッキングを繰り返そうかと思っている。

スマホはないけど、モバイルPCは持参、カメラ・データのBackUpが必要だからね、

ドミにバゲージを置いて、ネットで登録したレンタル・サイクルで街に漕ぎ出す。

街は小さく、観光スポットは凝縮されているので、バカンス煮込み、観光客盛り合わせ。
シーズン限定なのかな、屋台村が設置されていて、5ユーロ程度で手軽な食事やビールが。
サルディナス(イワシ)4$、ラビオリ4$とイタリアンなランチ、ただし立ち食いだけどね。

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8月9日、朝のバスでクロアチア再入国、一気に海辺の街ザダールへ移動。

5時間の道のりがバカンス渋滞で+1時間、6時間のバス旅。
14時過ぎ、ネット予約してあった街外れのビーチに近いホステルへ辿り着いた。
オープンして2ヶ月、「あなた、この宿、初の日本人だわ」、わお、1げっと。
さらにここでの滞在は貴重な情報とおもしろい出会いがたくさんあったのです。
ただし、それは後日の筆に、う~ん、気を持たせすぎ。

連日、雲一つなく、快晴、ここでの気温は40度近い、ザグレブはなんだったのだろう。

海辺の城塞都市は「バカンス」「週末」「フルムーン」のジェットストリーム・アタックで、
土曜夜はお祭り状態、人の渋滞、地元は歓待、たまたまの巡りあわせで印象的な週末に。

ここから日曜に日帰りでプリトヴィツェ湖に行こうと目論んでいたんですが、
なんと朝のバスはソールド・アウト、まったくハイ・シーズンってやつは。

湖訪問を月曜に切り替え、バス・チケット購入。
おそらく湖周辺の宿も空いてないでしょうね、夕方にバスで別の街へ、が賢明。

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8月11日、C/Oし、8:30のバスでプリトヴィツェ湖へ移動。

3時間後に到着し、尋ねると、16:30にスプリット行きのバスがあるというので購入。
湖での生存時間は残り5時間、ところがここから大変。
公園への入場チケット購入の行列がえらいことに。
ネズミのぬいぐるみと握手でもしてもらえるのか、というぐらい並んでる。
チケット購入にがっつり1時間、残り時間は4時間に、まったくハイ・シーズンってやつは。

遊歩道も渋滞しているであろうと予測して、逆回りで順路を巡った、こいつが正解。

滝などの写真スポットがあるたび、人が足を止めて渋滞なんですよぉ、なぁにぃ~、
やっちまったなあ、とはいうこともなく、逆回りが功を奏し、行き詰まることなく、
UPPERレイクを回り、LOWERレイクも同じく逆に巡り、
随所でふん詰まる団体客を澄んだ湖の水に突き落とすこともなく、3時間で完結。

こういうとき、一人旅の独り歩きは強みを発揮しますなあ。

4時間ちょっとの移動、予定どおり21時前にスプリットの街に到着。
湖でバスを待つ間、ネットで街の中心のホステルを確保しておいたので、そこへ。
21時過ぎに着くので、夕食を喰いっぱぐれるかと思ったら、
海辺のリゾート地の夜は長く、パン屋やスーパーもけっこう遅くまで開いている、
飢え死にせずに助かったよぅ。

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海辺の城塞都市で深夜の街歩き、各所から生演奏が流れてきて、心地よい。

今日、ドゥブロブニク目指し、13:00のバスで6時間の移動。
『アドリア海の真珠』といわれる世界的にも有名な観光地だけあって、
ネットの安宿情報はすべて満室、この旅初の「宿なし状態」で次の街に乗り込むわけです。

さあて、どうなることやら。


写真1; プリトヴィツェ湖。上流には滝が多く、個人的なこちらが好み。
写真2; リュブリャーナの旧市街には川が流れ、のどかな雰囲気。
写真3; 有名なザダールの『シー・オルガン』、24時近いというのにこの人出。
写真4; スプリット、深夜の街角。アブナイ雰囲気はまったくない。




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