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第十五夜 None Cicada @Ohrid [Macedonia]

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―DAY15― 8月19日

少しばかり早起きをし、涼しい夏の風に吹かれながら、旧市街へ向かった。

昨日のお祭り騒ぎはどこへやら、朝の8時となると人影は少なく、静けさが湖へつづく遊歩道を占領していた。
辺りはひたすら無音で時折、波の音が響くだけ、というノイズのない自然音だけの世界が広がっている。
城壁に沿った小道を上がり、旧城門や劇場、発掘作業が進む教会などを見て歩いた。

今もコンサートやイベントに使われているという古代のローマ劇場だけには気の早い団体客がいて、
独り占めすることはできなかったが、しばらくすると彼らは去り、朝の静けさは保たれたままだった。(写真2)

いつものように誰もいない風景を写真に収める。

お気づきの方もいるかもしれませんが、なるべく人影がない風景を撮影することにしてます。
慌ただしい旅ではないので、団体客が去るまで、見学者がいなくなるまで、
ゆっくり待って、無人のシーンを切り撮ってます。

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昨夜は『St. Johon Bogoslov-Caneo(聖ヨハネ・カネオ教会)』で折り返し、
ニギヤカな『スヴェティ・クレメンティ・オフリドスキ通り』で、軒を連ねる食堂のひとつに飛び込み、夕食にありついた。

誰かがオーダーした皿が目の前を通り過ぎていく、そいつに乗っかることに。

「あのお皿と同じやつ、ください」

ピタパンでキョフテを挟み込み、合間に溢れんばかりの野菜が埋められているサンドイッチ、
なんとおいしそうな一皿よ、キョフテ・サンドは70デナリ也。
その前の両替店で換えたデナル(複数形はデナリ)はUS$50で2,275デナリが手元にやって来ているので、
円換算だと1デナリ≒¥2,2、ドンブリ勘定で150円ほどの夕食なりけり。

安さにも増して楽しいのは地元の人たちに混じって店先のテーブルで食べること。
ちょっとローカル気取りができる瞬間は旅先でないと味わえない貴重な時間なのです。

おかげで写真を撮るのを忘れ、半分以上食べ終えてから気づき、
そこには原型を留めていないピタパンがあるだけだった。
やむなく店先で焼かれるキョフテの写真を撮ったものの、間に合わせの写真はヒドイことにブレブレでござい。(写真3)

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実はこの夜、ティラナで一緒だったドイツ3人組と「現地集合」の予定があった。

彼らはティラナに数日滞在した後、オフリッド近郊の友人宅を訪れる、といっていて、
「よかったらオフリッドで食事でもしよう」という提案をしてくれていた。
14日、あるいは15日にオフリッド集合できれば、というメッセージのやり取りを重ねていたのだが、
その後、こちらは南に下り、南からオフリッド入りする予定が崩れ、
尻尾を巻きつつ、ティラナ経由でオフリッドに入ったので14日の到着が遅くなった。

おまけに彼らの友人はオフリッドから離れたところに住んでいるらしく、
オフリッドの中心に出るまでけっこう大変だということがわかり、
「15日もびみょ~だね」という結論に至ってしまっていた。

15日夜にムリすれば合流できないこともなかったが、冷静に考えるとこちらに余裕がないことが見えてきていた。

8月5日に旅立ったものの、ザグレブ入りは翌6日、
28日にイスタンブールを発つが0:40という出発時間なので27日の夜のうちに空港入り。
翌29日に日本着となるので、日程的には8月5~29日の「25日間」なのだが、
到着日、出発日、帰着日はないものと同じなので、バルカンに費やす日々は22日、
バルカン8ヶ国にブルガリア、ルーマニアを加え、未踏10ヶ国を巡り、トルコに戻ろうという算段なのだが、
ここまでですでに15日を消化し、予定の半分の5ヶ国しか、
(クロアチア、スロベニア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニア)巡ることができていない。

気に入った海辺で連泊したり、バス路線がなく来た道を戻ったり、無計画な一人旅がみごとにアダになっていた。
あと7日間で残り5ヶ国というアダ花にここにきてようやく気付いたのだ。

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「カントリー・ホッパー」と化して加速して移動していけば無理な日程ではないが、
ひとつの街を一日で駆け抜けていくのはこちらの旅のスタイルと噛み合わない。
ジックリとその街の裏通りや町の食堂に入り浸り、少しばかりその国の本質を分かった気になりたいのだ。
そんな都合もあり、今回は無理に合わせず、次の街に進む選択を決めた。

まずは午前中にオフリッドの景色を眺め尽くし、昼のバスでマケドニアの首都スコピエ入りを目論む早起きなのですね。

おかげでひと気のない独り占めの景色をいくつも味わうことができた。
「早起きは3デナリの得」になるのかな、それじゃ安すぎるか、「三文」ていくらだ?

通常、普通の旅行者は朝ゆっくり、朝早いのは日本人ツアーの特徴でもあったりする。
ツアー参加者ともなると出発前にホテル周辺を散歩に出かけたりしますが、
治安の悪い国では「朝の散歩」を狙ったひったくりが多いので、ご注意を。
「日本人」「年配」「いいホテル宿泊」となれば狙うほうも狙いやすいというわけですね、ローリスク・ハイリターン。
特にスペイン、イタリア辺りでは早起き勤勉(!)な悪党が多いのでホント、気をつけてください。

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古代劇場を離れ、『Samoilova Tvrdina(サミュエル要塞)』を眺めつつ、
昨夜訪れた『Church of St. John at Kaneo(聖ヨハネ・カネオ教会)』を目指して歩いた。

狭い路地に無造作に置かれた骨董品のようなクルマを眺めつつ住宅街を進むと、
遺跡発掘現場のようなエリアに行き当たった。
入場料の支払いが必要なゲートらしきものがあったが、係員はおらず、門扉は開け放たれていて、
おかまいなしに行き来できるようになっていたのは開業前の朝の時間だったからだろうか。

地図で見ると『初期キリスト教教会』と書かれていた教会の周りは、
ギリシャ様式の柱やローマ時代のオブジェが無造作に転がり、現在進行で発掘が進んでいる現場だった。(写真6)
教会自体は比較的新しい造りで扉を開け放っている。
朝のこの時間、見学可能な教会は少ないので遠慮気味に歩みを進めると、地元の人たちの礼拝が行われていた。
不似合いな旅行者にも関わらず、招き入れてくれ、礼拝を共にすることが許された。

マケドニア語の祈りの言葉はわからなかったが、旅の無事を祈りつつ、おとなしく座って礼拝を見守った。

旅先のこういう時間は狙って味わえるものではない、たまたまのタイミング、偶然の出会い。
礼拝を終えると大皿に乗った果物が配られ、こちらにも「食べなさいな」という感じで差し出されてきた。
信者でもないのに「お供物」をいただくことに気が引け、手を出しかねていると、
地元の信者の方々は珍妙な旅行者を咎めもせず、「どうぞ、どうぞ」「食べろ、食べろ」と勧めてさえくれた。
大いに恐縮しながら大きなブドウの粒を頬張ると「おいしいでしょ、もっとどうぞ」とさらに差し出してくれるのだった。

地元の礼拝におジャマしただけなのだが、ちょっとだけ異文化的地元的宗教的不思議的体験。

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石造りで涼しい教会を出ると外の日差しはきつく、気温は徐々に上がりはじめていた。
朝の風が湖の湿り気を含み、心地いいのだが、それにも増してさわやかな理由がこのときわかった。

バルカン・エリアには「蝉」がいない。

日本の夏にはつきものの「み~んみん」「ぢぢぢ」のあの「セミ」が一切いないのだ。
生態系の問題だろうけど、「せみ」がいないってすごくないか?
日本ではあの音が「夏らしさ」でもあることは確かだが、あの音がないとなるとなんと涼やかな「夏」であることか。

湿度を含まないカラっとした陽射しの「熱さ」、ヒンヤリさすら感じる「木陰」がヨーロッパの「夏」を表しているが、
日本ではまとわりつくような「湿度」に逃げ場のない「蝉の声」の相乗効果が夏の「暑さ」を彩っていたのだ。
バルカン半島を歩いていてずっと違和感を感じていたことが湖の丘の上で解決をみた。

丘を下り、昨夜訪れた『聖ヨハネ・カネオ教会』を再訪。

観光客の少ない午前中はシンボリックな教会と湖の情景も独り占めすることができる。
ゆっくりと写真を撮り、ゆっくりと内部のフレスコ画を眺めた。
バルカン・エリアの教会のフレスコ画は痛みが激しいものが多い。(写真7)
文化財の保護まで手が(もちろんお金も)回らない国の窮状を表している。
世界中から観光客が足を運び、人々の声が集い、少しずつ保護されていくことになることを祈るしかない。

教会から湖を望むテラスに腰を下ろすとただ湖畔の波音だけが響いていた。

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旧市街に出向く前、宿に近いバス・ターミナルでスコピエ行きの時刻と料金を確認していた。

「バスは10:00、12:45、15:15、料金は500デナリよ」

「昼のバスは空いてますか?」

「ダイジョウブヨ」

窓口のガラスの向こう、眼鏡をかけた女性がそう教えてくれた。
ミニバスより50デナリ高い、円貨にして約100円の違いだから気にするほどの差ではないが、
夕食を70デナリで食べられる物価下では十分な節約といえた。
旧市街を見た帰り、ミニバスに乗れるか聞いてから買えばいいかな、そんな感じでバス・ターミナルを後にした。

教会からの戻りしな、朝、まだ空いていなかったミニバスの事務所に向かった、昨日、降ろしてもらった場所だ。

「スコピエ行き、11:45のミニバス、空いてますか?」

「ソールドアウトよ。17時ならまだ席があるわよ」

あららら、遅きに失したか。

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ベラーティからとティラナからの道のりがそうであったようにミニバスは安いうえに速い。
「差額」よりも「乗車時間」を切り詰められることが魅力だったが、到着時に即決できなかったのには理由があった。
「昼前の出発」となると午前中にオフリッドの町を観て回れるか、不安が残ったのだ。
この町に夕方に着いて翌日の午前中に出発する、というのはあまりに性急過ぎる気がして、
昨日の時点で決めてしまえなかったのはこちらが原因、
ミニバスは座席が少ないのでなくなってしまうのはいたしかたなし。

「ありがとうございます」

礼を言って事務所を出た、こうなると昼のバスを確保できるかもアヤシイぞ。


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